酪農経営補償金の交付申請受付を開始(豪州)


補償財源は酪農乳業調整委員会が管理

 豪州連邦政府に任命された酪農乳業調整委員会(DAA)は5月18日、7月1日か
ら始まる酪農乳業制度改革に向けて、酪農経営補償金の交付申請受付を開始し
た。受付期間は8月17日までの3ヵ月間とされている。

 DAAは、法律専門家の委員長と、酪農乳業界代表(2名)、政府委員、独立委
員の計5名のメンバーで構成されており、その主な任務は、酪農乳業構造調整事
業計画(DSAP)に基づき、各酪農経営者から提出される申請書類を審査して補
償金の受領資格を認定することと、交付額を決定して豪州酪農庁(ADC)に交付
を命ずることとされている。

 また、DSAPの財源として7月から飲用牛乳に課徴金(11セント(約7円)/リ
ットル:1豪ドル=64円)が賦課されるが、DAAはこの財源を管理するとともに、
当該課徴金の賦課期間(8年間の予定)を2001/02年度中に再検討することとさ
れている。


交付には経営収支見積書の提出が必要

 DSAPによると、補償金の受領資格者は、99年9月28日午後6時30分(連邦政府
の補償パッケージ公表時)に酪農経営に携わっていた者で、かつ、98/99年度に
生乳出荷実績を有する者とされている。

 ただし、酪農経営者は、補償金の交付申請に当たり、99/2000年度と翌年度の
農場経営収支見積書(FBA)を作成してDAAに提出しなければならない。FBAは、
新制度が経営に及ぼす影響を酪農経営者自身に的確に認識してもらうための措置
とされており、公認会計士の署名が義務付けられている。

 酪農経営者は、DAAから受領資格を認定され、かつ、FBAを提出すれば、98/
99年度の飲用向け出荷量に46.23セント(約30円)/リットル、加工向け出荷量
に8.96セント(約6円)/リットルを乗じた額の補償金を8年間の分割払い(四半
期ごとの交付)で受領できることになる。また、大手銀行は、一定の割引を条件
に、補償金を一括受理できる金融プランを提示している。酪農経営者は、今後、
補償金の受領を前提とした経営方針を決めることになるが、酪農を継続する義務
はなく、廃業も選択肢の1つに含まれる。


厳しい選択を迫られる酪農家

 今後は、生乳取引が完全に自由化されるため、乳価の動向によっては補償金だ
けで酪農を継続できる保証はない。事実、大手飲用乳メーカーの1つは、最近、
現行より40〜50%も低い水準の飲用乳価を提示して酪農経営者を失望させた。こ
うした動きに対して最低乳価の制定を求める声も上がっているが、そもそも今回
の改革が生乳取引の規制撤廃を目指したものであることを考えれば、現実的な意
見とは言い難い。第1回目の補償金交付は10月中旬に行われる予定となっている
が、多くの酪農経営者が極めて厳しい選択を迫られるのは間違いないと思われる。

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