豪州、中国との貿易協定に調印

WTO加盟後の中国との貿易促進に期待

　中国の世界貿易機関（WTO）加盟を念頭に置いた豪州・中国の2国間貿易協定
が5月22日、豪州連邦政府のベール貿易相と中国の石広生・対外貿易経済合作部
長により北京で調印された。今回の調印は、豪州にとって中国の抱える12億人の
市場が開かれたことを意味するものであり、長年の懸案であった中国との貿易が
促進される。

　ベール貿易相は、調印に先立って行われた会見で「中国市場は、豪州の輸出産
業にとって10億豪ドル（640億円：1豪ドル＝64円）以上の貿易が期待できるもの
となる。」と述べ、今後の輸出促進への期待を表明した。

　今回の2国間貿易協定により、中国のWTO加盟後に、農産物をはじめとして、
工業製品、サービス（電信、保険、金融等）を対象に千を超える品目の関税率が
引き下げられる。主な農産物の関税率は、牛肉が45％から15％に、乳製品ではチ
ーズ、ヨーグルトが50％から最大で12％に、バターについても50％から25％へと、
大幅な引き下げになる。

輸出拡大を見込む農業関係団体

　ここ数年の両国の貿易取引は、豪州側の輸出拡大が目覚ましく、農産物輸出に
ついて乳製品を例に取ると、昨年の実績は2万トン、金額にして2千4百万豪ドル
（約15億円）となり、95年の2倍近い水準となっている。

　今回の調印について、豪州の農業関係団体はいずれも歓迎の意を表明している。

　乳製品業界では、中国向けの輸出が95年から98年にかけて2倍の伸びを示して
いることもあり、今回の調印をにらみ5月上旬にミッションを中国に送り込むな
ど、さらなる市場獲得への動きを見せていた。ミッションの代表であるオースト
ラリア酪農庁（ADC）は、中国への乳製品輸出は、粉乳類を中心にここ数年、毎
年2割の増加を続けており、今後も確実な成長が見込まれる市場であると期待を
表している。

　また、肉牛関係者は、生体牛を中心とする輸出が促進され、牛肉関係では日本、
韓国に次ぐアジア第3の輸出市場になるものと期待を込めている。このような中、
かねてから交渉が行われていた中国との生体牛輸出契約が調印され、将来の輸出
拡大に向けて今年6月に出荷が行われる。

中国側の事務管理能力に懸念の声も

　中国側は、WTO加盟を改革・開放路線の目玉としており、5月中旬のEUとの交
渉合意と今回の豪州との貿易協定調印を足がかりに、WTO加盟のカギを握る米
国の通常貿易関係恒久化法の早期成立にはずみをつけたい考えである。また、
念願であるWTO加盟を果たし、現行執行部体制を盤石にする意向もうかがわせ
ている。

　ベール貿易相は、中国に対しWTO加盟を支援する意向を示しているが、豪州
国内では、中国側の協定順守のための事務管理能力不足を懸念する声も出てい
る。

　今後、貿易取引の中で何らかの問題が生じた場合、中国側の対応が適切にな
されるか不安視されているが、12億人の新たな市場開放は、農業をはじめとす
る豪州の輸出産業に大きな効果をもたらすものとなる。

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