中国、加工貿易企業の負担を軽減


昨年の貿易額は輸出入とも過去最高に

 79年の改革開放政策以降、中国の国際貿易は本格的な力をつけ始めたが、97年
後半に発生したアジア経済危機の影響を受けて停滞した。特に輸出については、
その後1年近くにわたって減少が続く事態となった。しかし、増値税(付加価値
税)の還付率引き上げやアジア経済の回復などから、99年下半期には輸出が前年
同期に比べ16%近く増え、プラス成長に転じた。これにより99年の貿易総額は、
前年比11.3%増の3,607億ドル(約39兆3千億円:1ドル=109円)となり、輸出入
ともに過去最高を記録することとなった。

99年の中国の貿易額
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 資料:中国海関統計
  注:( )内は前年比

 このうち、加工貿易が占める割合は51.2%で、特に輸出額に占める割合は56.9
%と、引き続き加工貿易が、輸出拡大のけん引役となっていることがうかがえる。

 なお、加工貿易の原材料の6割弱は日本、台湾および韓国から輸入され、製品
の輸出については米国、EU、香港で6割強、これに日本を加えると、8割強がこれ
らの地域に輸出されている。


加工貿易の保証金納付に銀行保証なども認可

 加工貿易については、99年10月1日から、加工貿易企業や商品を分類管理し、
違法行為のあった企業から、関税や増値税などに相当する額の保証金を実際に徴
収するなどの新たな管理制度が施行されている(本誌2月号「トピックス」参照)。

 この管理制度に対しては、業界や外資系企業などから見直しの要求が相次ぎ、
中央政府は、C類企業(過去に違反行為があった企業)に対する分類基準の緩和
などを行ったほか、昨年12月29日には、加工貿易企業が保証金を納付する場合、
金銭の代わりに中国銀行(国有の外国為替取扱銀行)の保証状などの提出も認め
ることを公告し、今年1月1日から施行された。

 そして3月30日には、これを補完するための措置として、中国銀行の保証状発
行に当たり、加工貿易企業の資産などに加え、外国銀行などからの信用保証も担
保として認めることが公告され、4月10日から施行されている。また、この通達
では、1つの実転(保証金を納付すること)台帳業務には、保証金を納付するか
保証状を提出するか、いずれか一方に統一することも明記された。


B類企業の保証金を50%削減

 海関総署は、さらに5月1日から、B類企業(一般の違法行為がない企業)が制
限品目(羊毛、砂糖、プラスチック原料など、内外価格差が大きく、かつ、税関
が保税監督管理しにくい商品)を輸入する際に納付する保証金を、半額とするこ
とを公告した。外資系企業を中心とする加工貿易企業からは、密輸などの不正行
為を防止するための措置については理解するものの、輸入価格の3〜4割余りにも
なる保証金の納付が、正常な企業活動を営む上で大きな負担になっているため、
企業分類の見直しや制限品目の撤廃などが強く要求されているところであった。

 なお、C類企業が制限類または許可類(禁止類および制限類を除く商品)を輸
入する際に納付する保証金については、現行通りとされた。


国務院が輸出加工区の設置を承認

 関係筋によると、加工貿易に対する合理的な管理体制の整備・強化などのため、
国務院(内閣)はこのほど、海関総署が提案していた「輸出加工区」の設置計画
を承認した。輸出加工区は、既存の経済開発区の中に、管理の行き届く面積(2
〜3平方キロ)を加工貿易専用の区域として隔離設定するもので、第1陣として
大連、天津、北京天竺、煙台、威海、昆山、蘇州工業園区、上海松江、杭州、ア
モイ杏林、深セン、広州、武漢、成都、琿春の15経済開発区内に設置されること
となった。当面は、新規参入企業や増設予定の企業を誘致するが、将来的には加
工貿易企業を輸出加工区に集中していく意向だ。また、加工施設の重複設置は認
めず、今後の面積や設置個所の拡大も厳重にコントロールする。

 なお、輸出加工区についての詳細は公表されていないが、区内の企業には保証
金台帳制度を実施せず、通関業務についても簡素化される。輸出加工区内では、
このほかに増値税の発生がないこと、輸出加工区内に持ち込んだ機械・設備は、
5年経過すれば国内への免税転売が可能となることなどのメリットもあるという。

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