メキシコ、米国産牛肉へのダンピング防止税を最終決定


仮決定を追認したクロ裁定

 メキシコ商工振興省(SECOFI)は4月28日、米国産輸入牛肉に対してダンピン
グ防止税を賦課するという、昨年8月の仮決定を追認する最終決定を下した。

 これは、94年1月の北米自由貿易協定(NAFTA)の発効により、両国間の牛肉
貿易の国境措置が相互に撤廃された後、米国からメキシコへの牛肉の輸出量が急
増したことを背景に、メキシコの肉用牛生産者などが98年6月、SECOFIに対し、
米国産輸入牛肉についてのダンピング提訴を行ったことに端を発するものである。
その後99年8月には、ダンピングとの仮決定が下され、米国産牛肉の輸入に際し
ては、企業ごと、部位ごとに異なるものの、最高で215%という高水準のダンピ
ング防止税が暫定的に賦課されていた。


課税方法は仮決定より複雑化

 今回の最終決定の内容も、仮決定同様、牛肉の処理形態や個々の輸出企業ごと
に課税水準が異なるという変則的なものであるが、仮決定以降の利害関係者から
の追加的な情報提供や公聴会での意見聴取の結果などを踏まえ、大幅な見直しが
行われている。

 具体的には、まず、課税方式が、輸入価額を基礎とする従価税から、従量税へ
と変更され、最高税額(1kg当たり)は、枝肉が7セント(約8円:1ドル=109円)、
骨付き部分肉が80セント(約87円)、骨なし部分肉が63セント(約69円)に設定
されている。

 また、課税対象となる輸出企業の区分もより細分化され、SECOFIのダンピング
価格差調査にデータを提供したとされるエクセル社、IBP社、ファームランド社
などの計12社には、無税または低い税額が適用されるのに対し、コナグラ社をは
じめとするそのほかの企業に対しては、最高税額が賦課される。

 さらに、米農務省(USDA)による格付けが行われなかったものや、「セレク
ト」または「チョイス」の格付けがなされ、と畜後30日を経過したものに対して
は、輸出企業を問わず最高税額が適用される一方、「プライム」や、アンガス・
ビーフは無税扱いとなっている。


米国関係者は重大な関心

 USDAは、比較的高品質・高規格の牛肉がダンピング防止税の対象から除外さ
れたのは、メキシコ国内での需要が非常に強く、メキシコ産牛肉とも直接競合す
ることがないためと指摘し、世界貿易機関(WTO)協定の内国民待遇原則との整
合性を問題視するなど、高い関心を示している。

 また、5月8日には、全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)をはじめ、米国食肉
協議会(AMI)、米国食肉輸出連合会(USMEF)およびファーム・ビューロー
(AFBF)の4団体が、今回のメキシコ側の最終決定を激しく非難した書簡を米国
政府に対して提出した。これによると、特に、格付けやと畜後の経過日数いかん
によって税額に格差を設けるのは、WTOおよびNAFTAの下での米国の権利を侵害
するものであり、米国政府は、速やかに最も適切な紛争解決の場での正式な申し
立てを行うべきであるとしている。現在までのところ、米国政府による具体的な
アクションは起こされていないが、今後の2国間における展開が注目されるとこ
ろとなっている。

 なお、メキシコにおける米国産牛肉の輸入量は、95年の約2万9千トンから、99
年には約15万8千トンへと大幅に増加し、米国にとっても、メキシコは日本に次
ぐ輸出先となっている。USDAは、増加の原因について、メキシコでは、経済の
回復や人口の増加を反映して増大する牛肉需要に、近年の干ばつの影響などによ
り国内生産が追いついていかないためとしている。

元のページに戻る