EUのホルモン牛肉輸入禁止への制裁に品目入替方式を導入(米国)


制裁品目を半年ごとに入れ替え

 クリントン大統領は5月18日、EUのホルモン投与牛肉輸入禁止問題などに対す
る制裁対象品目について、定期的なローテーションを実施していくことを含む法
案に署名した。この法律の規定に基づき、米通商代表部(USTR)は、同法の施行
後30日以内に対象品目のローテーションを開始し、以降6ヵ月ごとに品目を入れ
替えていくこととしている。

 EUのホルモン投与牛肉の輸入禁止措置については、世界貿易機関(WTO)におい
てWTO協定違反と認定されたにもかかわらず、EUが当該禁止措置を継続したため、
米国政府はWTOのお墨付きを得て、昨年7月29日からEUに対する対抗措置を発動し
ていた。対抗措置の内容は、WTO紛争解決機関(DSB)が承認した損害額の範囲内
で、牛肉、豚肉、ハムなどの食肉製品およびトマト、トリュフ、フォアグラなどの特
産品その他のEU産輸入品に対する100%の関税率の適用というものであった(こ
れまでの経緯は、本誌99年5月号および同年9月号「トピックス」参照)。


新方式は圧力強化を望む業界の要請を反映

 EUは当該措置の発動後も、依然として輸入禁止措置を撤回する動きを見せない
ため、米国は、食肉関係団体などからの強い働きかけもあり、対象品目を定期的に
入れ替えることを通じて、より効果的な制裁を行うことに踏み切った。定期的な
ローテーション方式の導入を積極的に議会などに要請してきた全国肉牛生産者・
牛肉協会(NCBA)や米国食肉協議会(AMI)は、今回の法案成立を歓迎するコ
メントを発表した。AMIのボイル会長は、「EUの非妥協的態度は、これまでのアプ
ローチが効果的でなかったことを示している。ローテーション方式の導入により、
EU加盟国は、WTOのルールに従わない代償を確実に払うことになる」と述べた。
なお、NCBAが同方式の導入に積極的に関与するようになった背景には、EU加盟国
の農相の「報復関税の対象となっても、業界は簡単に適応して通常通りのビジネ
スを継続できる」とする発言があったと報じられている。

 NCBAなどは、ローテーション方式の採用で、より多くの異なる業界が影響を被
り、それらの業界からEUに対してWTO裁定受け入れの圧力が増すことを期待して
いる。

 USTRは5月26日、対象品目の候補リストとして、既に対抗措置の対象となって
いる品目を含む、当初の対抗措置の発動時にWTOへ提出されている広範な暫定品
目リストを提示した。これには、多くの食料品のほか、工業製品であるオートバ
イも含まれている。USTRでは、対象品目の変更などに関するパブリックコメント
を受け付けた後、対象品目を確定し、遅くとも6月19日までには新方式の内容を
公表したいとしている。


EUは2国間協議を要請

 一方、EUは6月8日、今回の米国の動きについて、対抗措置の対象品目を自国
のみで決定することは、いかなる対抗措置もDSBによって認められなければなら
ないとのWTOの規定に反するなどとして、紛争解決に係る規則および手続きに関
する了解第4条等の規定に基づく2国間協議を米国政府に要請した。10年以上にも
わたる米・EU間の紛争は、ますます泥仕合の様相を深めている。

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