米国、新たな食生活ガイドラインを公表


5年ぶり5回目の改訂

 クリントン大統領は5月27日、定例のラジオ演説の中で、新たな「国民のため
の食生活ガイドライン」を同日付けで公表したと述べるとともに、近く食肉・家
きん肉製品についても、栄養成分表示を義務付ける提案を行う予定であることを
明らかにした。

 米国では、肥満と心臓病やある種のがんといった慢性疾病との因果関係が指摘
されている中で、今や成人の3人に1人が太りすぎとみられており、また、国民の
約9割が不健康な食生活を送っているとされている。

 本ガイドラインは、食生活の改善を図るための情報提供やアドバイスを行うこ
とにより、国民の健康増進や慢性疾病の予防に資することを目的としており、連
邦政府による学校給食プログラムをはじめとする食料・栄養政策も、そこに示さ
れた方向に沿って実施されている。米農務省(USDA)と保健社会福祉省(HHS)
は、栄養学や医学の専門家グループからの勧告に基づき、5年ごとにガイドライ
ンの見直しを行っており、今回が第5次の改訂となる。また、これと併せて、5月
30日から2日間、両省の主催による全国栄養サミットが31年ぶりに開催され、食
生活や健康などに関するさまざまなディスカッションも行われた。


慢性疾病予防の観点などに基づき助言

 今回のガイドラインも、品目ごとの摂取バランスを図示したフード・ガイド・
ピラミッドをはじめ、前回の95年ガイドラインで示された方向を基本的に踏襲す
るものであるが、健康な生活を送るためには、単なる体重管理だけでなく、日ご
ろの習慣的な運動が重要であることを改めて強調している。さらに、今回初めて
食品の安全性確保の観点から、食品ごとの温度管理の指標など、家庭での調理・
保存方法などに関するアドバイスも加えられている。

フード・ガイド・ピラミッド 毎日の食品選択の指針
pyramide.gif (80447 バイト)
 資料:USDA/HHS
  注:図注の□および▽は、それぞれ食品中の脂質および糖質を表す。

 また、慢性疾病の予防の観点からは、飽和脂肪酸とコレステロールの含有量が
少ない食事を取るとともに、全脂肪摂取量も適正な水準(注:前回ガイドライン
と同様、摂取カロリーの30%以内)とすることとされている。特に、前者に関し
ては、@バター、ラードといった脂肪の摂取を控え、代わりに植物油を用いるこ
と、A無脂肪または低脂肪の乳製品、調理済み乾燥豆、魚、赤身肉および家きん
肉を選ぶこと、B毎日、穀類や野菜・果実を十分に取ること、C脂肪、飽和脂肪
酸およびコレステロールの含有量が少ない食品の選択に資するため、栄養成分表
示を利用することがアドバイスされている。


精肉などにも栄養成分表示を義務化

 一方、USDAは、栄養成分に関する消費者への情報提供を図るという観点から、
今回のガイドラインによって示された方向に沿って、食肉・家きん肉(ひき肉製
品や精肉など)についても、脂肪、熱量(カロリー)、コレステロールといった
栄養成分に関する表示を小売段階で行うことを義務付けることとし、今年の夏終
わりごろまでに、関連規則案を公表することを明らかにした。既に、ベーコンな
どの加工品については表示が義務付けられているが、今回の産品については、小
売業者の自主表示となっており、これを実際に行っている業者は6割にも満たな
いとされている。

 なお、このような栄養成分に関する義務表示制度の導入について、全国豚肉生
産者協議会(NPPC)は、生産者、パッカーへの過剰な負担増は好ましくないとし
ながらも、消費者は明確かつ正確な豚肉の栄養情報を小売段階で入手できるとし
て肯定的に受けとめているのに対し、全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)は、
現行の自主的な栄養表示を支持することを表明している。

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