◇絵でみる需給動向◇
EU統計局によると、99年のEU15ヵ国から域外への豚肉等(生体豚、調製品およ びラードなどを含む)の輸出量(生体豚は枝肉換算ベース、その他は製品重量ベ ース)は、前年比25.6%増の155万トンとなった。EUの域外輸出量は、15ヵ国体 制となった95年以降、生産量の増加などを受けて拡大が続いているが、過去と比 較しても99年の増加は大きなものとなっている。 輸出増加の要因としては、@99年の豚肉生産量が記録的な水準に達したことに 加え、価格対策として実施されていた民間在庫補助(APS)が99年9月に解除され たことで、在庫放出により供給量が増加し輸出圧力が高まったこと、A過剰生産 に伴う域内価格の低迷、輸出補助金の増額およびユーロ安で推移している為替相 場などにより、有利な価格での輸出が可能になったことなどが挙げられる。 ◇図:EUの豚肉地域外輸出量◇
これを輸出相手国別に見ると、最大の輸出先であるロシア向けは、55万6千ト ンと前年の2.7倍に増加した。この増加分のほとんどは食料援助によるものとみ られている。また、経済の回復が著しい韓国向けは、前年に比べ3倍以上に拡大 し、大幅な増加を示した日本向けとともに、輸出量全体を押し上げる大きな要因 となった。結果として、これら3ヵ国向けが輸出量全体に占める割合はさらに高 まり、99年にはEUの豚肉輸出量の約6割を占めるに至っている。 輸出先別の豚肉輸出量 資料:EU統計局
長引く価格低迷により、豚肉生産は99年末から減少に転じた。APSからの在 庫の放出も2000年初めにはほぼ完了したとみられる。こうした中で、EU域内 の豚の需給はバランスを取り戻しつつある。 EUの豚肉管理委員会は4月12日、域内の豚枝肉卸売価格の回復を受けて、冷 凍および冷蔵豚肉について約30%、豚肉調製品について約20%の輸出補助金の 削減を決定した。 価格の上昇は経済の回復が進まないロシア向け輸出の減少に直結することか ら、2000年のEUの豚肉輸出量は、一転して減少するとの見方が強い。ただし、 韓国向けなど他の主要輸出先の動向に不透明な要素が多いことから、一部には 輸出拡大の可能性を期待する動きもみられる。
元のページに戻る