ブロイラーの愛護に関する勧告(EU)


最大の問題は、強度の選抜に伴う疾病の発生

 EUの家畜衛生・動物愛護に関する科学小委員会は、3月21日、ブロイラーの愛
護に関する勧告を含む報告書を採択した。

 同報告における勧告の概要は、以下の通りである。

 ブロイラーにおいて、動物愛護に関する最大の問題は、成長および飼料効率を
主に追求した強度の選抜に伴う副作用であると考えられる。成長期の鶏では、脚
の障害、腹水症、突然死症候群が見られ、繁殖用鶏では、過酷な給餌制限などの
問題がある。育種家は育種指標として、健康の重要性にかなり高い優先度を置く
べきである。また、責任を持って自身の生産する鶏の動物愛護基準が容認される
ものであることを示すべきである。


飼育密度は、建物の気候管理能力に考慮

 動物愛護の観点から見たブロイラーの飼育密度については、と鳥年齢、と鳥体
重、換気率、換気装置の能力、さらに気候条件により影響の度合いが異なるとし
ており、良好な室内気候環境を維持できる建物内では、高飼育密度の問題は少な
く、飼育密度に関する勧告はこの点を考慮する必要があると指摘している。

 ただし、飼育密度が約30kg/m2を超えると室内気候管理能力いかんにかかわら
ず動物愛護の点で問題が生じるとみられ、換気管理が悪いとこれよりも低い密度
でも問題が生じる。したがって、最大飼育密度は、建物や室内気候管理能力に応
じて決定すべきであると勧告している。


飼育管理者に対する研修の必要性などを勧告

 そのほか、以下の項目について勧告を行っている。
・動物愛護は飼育管理者の質に大きく影響されるため、機材管理の技術的な知識
 に加え、ブロイラーの生態学について研修すべきである。

・ブロイラーを毎日監視し、健康状態の悪い鶏は直ちに人道的方法でとう汰すべ
 きである。特に、脚の状態が悪い徴候には注意し、歩行がかなり困難な鶏はと
 う汰すべきである。このほか、重度の腹水、奇形、重度外傷および発作を持つ
 鶏は、直ちにとう汰する必要がある。

・適切なモニター(監視)計画を確立し、公表すべきである。脚の健康評価を継
 続実施すべきであり、各建物では、換気機能、空気および敷料の質、健康状態、
 とう汰率・致死率をモニターすべきである。

・現在の選抜における骨異常発生率の減少を確実にするため、ブロイラー系統の
 骨の特徴を評価すべきである。また、脚および筋肉の問題を最小限にするため、
 遺伝的選抜を改善するとともに、栄養管理の改善にもより努力すべきである。

・敷料の表面は乾燥を保つべきである。

・5〜6週齢の鶏では、過密および湿った敷料を避け適切な環境モニター、換気率
 の調整によって、「見かけの温度」(温度と湿度を組み合わせた数値)を40℃
 未満に保つよう努めるべきである。

・空気の質(ほこりの量、二酸化炭素、一酸化炭素およびアンモニア濃度等)を
 管理し、動物愛護に悪影響の無いようにすべきである。特にアンモニア濃度は
 20ppmを超えてはならない。

・成長しているブロイラーは1日当たり最低2時間の暗やみ状況を与えるべきであ
 る。推奨最低光度は白熱光で第1週目100ルックス、その後は20ルックスである。
 蛍光照明を使う場合は、光度は25%下げることができる。

・捕獲時のストレスと傷害を最小限にするように、従事者を適切に研修すべきで
 ある。病気や傷ついた鶏は他の鶏を捕獲する前に取り除くべきである。

・生産性を最大にする繁殖用鶏の過酷な給餌制限は容認できない問題である。た
 だし、自由給餌による体重増加は別の問題を起こすので、適切な改善が必要で
 ある。また、くちばしやあしの爪などの切断が不要であるような飼育方法をと
 るべきである。

 さらに、この報告書では、このほかの問題解決のため、なお一層の研究が必要
であると指摘している。

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