食品基準エージェンシーが始動(イギリス)


食品安全性の確保のため、新組織を設立

 イギリスで4月1日、法律に基づく組織として食品基準エージェンシー(Food 
Standards Agency)が設立され、4月3日から業務を開始した。この組織は、食
品の安全性に対する国民の信頼を回復し、消費者の健康を維持するため、食品の
安全性の確保を図ることを活動の目的としている。イギリスでは、食品の安全性
に関する対策は、これまで行政区分ごとに機能が分立していたが、今後は、食品
の原材料生産から消費に至るまで包括的かつ統一的に対応できる体制が整備され
たと言える。

 同エージェンシーの主な機能は、次の通りである。

・国民および政府に対し、食品の安全性や栄養、食事に関するアドバイスおよび
 情報の提供

・食品の安全性確保を図るため、効率的なルールの運用およびモニタリングの実
 施

・正確かつ適切な食品の表示方法の導入および消費者が適切な食品を選択するた
 めの支援

 業務の対象となる分野は、食品添加物・新規食品、家畜飼料、食品中の化学物
質・毒性物質・汚染物質、微生物、栄養、食品表示・基準および食肉衛生など広
範囲にわたっている。

 同エージェンシーは、会長、副会長および12人の委員で構成され、これらによ
り組織の運営方針が決定される。なお、組織の独立性の維持に配慮され、委員に
は特定業界と利害関係のない有識者が指名される。


96年3月のBSE問題が新組織設立の契機

 同エージェンシー設立に向けた動きは、97年3月に公表されたレポートから始
まった。この背景には、96年3月にイギリスで再燃した牛海綿状脳症(BSE)問題
の影響により、食品の安全性に対する消費者の信頼が失墜するとともに、安全性
に対する関心が急速に高まったことが挙げられる。このレポートは、97年5月、
首相に提出された後、消費者、公衆衛生、地方自治体、獣医師、科学的研究分野
および食品製造・流通業界など広範な分野を対象に協議が行われた。この結果を
踏まえ、98年1月、政府が同エージェンシーに関する白書を公表し、さらに協議
が続けられた。その後、法案の草案レポート公表(98年3月)、法案の提出(99
年6月)を経て、99年11月に法律が成立した。


EUレベルでも進む食品の安全性に関する機関の設立

 EUでは、BSE問題後も99年5月にベルギーで発生した鶏肉等のダイオキシン汚
染問題を契機として、食品の安全性に対する関心が一層高まった。このため、食
品の安全性対策が重要課題の1つと位置付けられている。EU委員会は、2000年1
月、食品の安全性に関する白書を公表し、その中で食品安全庁設立に言及してお
り、今後、同組織の設立に向けた動きが進展するとみられる。EUに先んじて発足
したイギリスの同エージェンシーが、今後どのように機能を発揮していくかが注
目される。

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