アルゼンチンの食肉衛生をめぐる課題
高い衛生水準が求められる輸出業者
現在、アルゼンチンの食肉処理加工業者のうち牛肉輸出業者は、農畜産品衛生
事業団(セナサ)の決議4238/68(本誌2000年5月号「特別レポート」参照)で
定められている基本的な衛生、品質管理条件のほか、各輸入国が個別に課す高度
な衛生、品質管理条件を満たすことが要求されている。例えばEUへの輸出の場合
は、原産地の表示、生産者のセナサへの登録、特定の合成ホルモンの残留検査な
どが課されている。米国向けの場合は、危害分析重要管理点システム(HACCP)
の導入が要求される。EU、米国への輸出条件の共通事項は、枝肉の熟成条件、バ
クテリア検査、化学物質の残留検査などである。
国内向け専業者は国内基準のみ
一方、牛肉生産の約85%を占める国内市場にだけ供給する食肉処理加工業者は、
同決議の衛生、品質管理条件を満たし、セナサの認定工場であることを示す認定
番号を表示すれば実需者に販売できる。
輸出業者の施設で処理される国内向けの牛肉は、輸出向けと同じ衛生、品質管
理条件の下で処理され、衛生、品質管理条件の違いは最終的に輸出業者のコスト
として跳ね返っている。このため、衛生、品質管理条件のダブルスタンダードに
対して、従来から輸出業者の不満が絶えないでいる。
衛生条件の格差解消に向けたセナサの計画
セナサは、HACCP導入と製品の表示内容の2点が輸出業者と国内向けの業者の
大きな差であるとし、将来この差をなくすことを意図している。具体的には以下
のコンセプトに重点を置いた取り組みを計画している。
@国内向けの食肉処理加工業者に対してHACCPの適応を実施するため、同決議に
HACCPを追加する。
A国内向けの表示を輸出向けと同様にし、原産地、賞味期限、成分表示など消費
者の知りたい情報を盛り込む。
B消費者自身の意識改革も必要であることから、消費者の代表をセナサの衛生、
品質関係の会議のメンバーにする。
C国内消費の3割を占める食肉専門店、7割を占めるスーパーマーケットに対して
はまだ枝肉搬入が一般的だが、今後、徐々に部分肉の搬入を増やし表示を工夫
する。
トータルクオリティー達成を目指して
セナサは、これらのコンセプトを総合してトータルクオリティーを達成すれば、
輸出向け、国内向けの区別はなくなり、しかも、輸入国の個々の要請に従わなく
てもアルゼンチンの食肉といえばどの国へも文句無しに輸出できると考えている。
将来的にトータルクオリティーが達成されれば、アルゼンチン産牛肉の輸入国
での評価も高まるとともに、国内向け製品の衛生、品質面に対しても消費者の関
心が高まることから、衛生当局としてのセナサの今後の取り組みが期待されてい
る。
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