中国、米国産農産物の輸入を開始


西海岸産小麦は、約30年ぶりに対中輸出が可能に

 昨年4月10日、中国の朱鎔基首相の訪米と併せて行われた米中交渉の結果、米
国産の小麦、食肉(鶏肉を含む。以下同じ。)およびかんきつ類に対する動植物
検疫などについて、2国間で合意に達した。

 中国の世界貿易機関(WTO)への加盟に向け、米中の貿易当局はそれまで、両
国の農産物の貿易摩擦を解消すべく、精力的な取り組みを見せていた。米国は、
大幅な対中貿易赤字を抱え、国際競争力の高い上記の3品は、是非とも対中輸出
したい製品だった。一方、中国は植物検疫の取り扱いと、国際相場より5割以上
もコストが高いと言われている農業生産を保護することが大きな課題であった。

 小麦については、中国が73年から、黒穂病(麦の穂に発生し、かつては麦の最
重要病害とされていた)の原因の1つであるTCK真菌の胞子などが全く存在しない
ものしか輸入を認めなかったため、事実上、米国の太平洋側北西部産小麦は、対
中輸出への道が閉ざされていた。

 食肉については、中国の検疫官が検査・承認した施設で処理されたものを、中
国の限られた法人が一部のホテルやレストラン向けに行う輸入が認められていた
だけであり、また、かんきつ類についても、ミバエの侵入防止のため、中国への
輸入は認められていなかった。


準備期間を経て米国からの輸入解禁を公告

 この米中農業協力協定などを受け、両国では農業協力をめぐる実務的協議や、
検疫問題に関する技術協力なども含めて交流が続けられてきた。また、中国の専
門官による米国生産地の予備検査なども行われ、今年3月22日に農業部、対外貿
易経済合作部、国家出入境検験検疫局(SAEEIQ)が共同で、米国からの小麦、食
肉、かんきつ類の輸入を解禁することを公告した。公告の主な内容は、次の通り
である。

1 小麦については、米国からの輸出前に同国の政府機関が検査・検疫を行い、
 検疫証明書が発行されているものに限り輸入を解禁する。TCK胞子数は、米中
 農業協力協定の規定数を超えてはならず、今後は、米中の共同研究により確定
 した量に基づき、胞子の許可量を定める。

2 食肉については、米農務省(USDA)食品安全検査局(FSIS)が認可したと
 畜加工場で生産されるものに限り輸入を解禁する。FSISは、輸出する食肉の検
 査・検疫を行い、衛生証明書を発行して安全性を証明しなければならない。

3 かんきつ類については、テキサス州、アリゾナ州、フロリダ州(特定の7郡
 に限定)、カリフォルニア州(特定の6郡に限定)からのものに限り輸入を解
 禁する。対象はSAEEIQとUSDAが共同指定する果樹園のもので、指定された輸
 送・梱包業者、倉庫が扱うものであれば、一定の検疫条件下で中国へ輸出する
 ことができる。


米議会のWTO加盟承認を視野に輸入を開始

 米国のバシェフスキー通商代表とグリックマン農務長官は、米国産の牛肉・豚
肉および鶏肉について、今年4月2日に直接、中国へ向けての輸出が開始されたと
発表した。

 同代表によると、これらは現地時間2日夜、サンフランシスコから上海の量販
店企業向けに空輸されたという。米国は長期にわたり、主に香港を経由して中国
内地へ食肉を輸出してきた。香港は、99年には米国の食肉輸出第4位の市場にま
で成長し、3,230万ドル(約34億6千万円:1ドル=107円)相当の食肉のうち、過
半が中国内地へ販売されている。

 中国のWTO加盟について、バシェフスキー通商代表は、今回の対中輸出発表に
際し、米議会が中国に対する通常貿易関係(最恵国待遇)恒久化を承認して初め
て、米国製品が中国市場に全面的に進出できると強調した。クリントン政権は、
既に恒久化法案を米議会に提出しており、今年6月までに採決の見通しとなって
いる。しかし、米議会内にはいまだ加盟反対の意見も強く、米中政府は歩調を合
わせて関係者の説得を続けている。

 なお、小麦については4月初旬、かんきつ類については3月下旬から、それぞれ
中国へ輸入されている。

元のページに戻る