国内初の余乳処理施設に期待(タイ)


タイ酪農協が同国で初めての育粉工場建設へ

 タイでは、乳幼児用粉ミルクの輸入関税率を、5%から1%に引き下げるとい
う大蔵省の提案などに酪農家が強く反発し、閣議が空転する事態にまで発展した
(本誌5月号トピックス参照)。しかし、一方では、同国で初となる乳幼児用粉
ミルク製造工場の建設が計画されるなど、新たな酪農振興対策が始まりつつある。

 タイ酪農業協同組合は先に、タイ中部に位置するロッブリー県に6億バーツ
(約17億円:1バーツ=約2.9円)を投じ、年間処理能力3万トン規模の乳幼児用粉
ミルク製造工場を建設することを発表している。計画では、1日当たり200トンの
生乳を処理し、20〜25トンの粉ミルクを製造する。


政府も工場建設への支援を表明

 農業協同組合省から提案されたこのプロジェクトは、閣議でも了承されており、
政府も輸入品に代わる良質の国産品を育成する酪農振興の一環として、この事業
を支援する立場を表明している。タイ酪農業協同組合としても、生産が増加する
傾向にある生乳の売却先が、長期的かつ安定的に確保されることから、同省の案
を評価しており、今後の余乳処理対策の目玉として大いに期待されている。


工場建設で削減が見込まれる余乳対策費

 タイでは現在、酪農家戸数が増加しており、その数は今後10年間で15〜20%増
えるものと予測されている。これに伴い、生乳生産も相当量の増加が見込まれて
いる。

 一方、タイが輸入する乳幼児用粉ミルクは、年間100億バーツ(約290億円)に
も上っているが、製品の価格動向を勘案すると、輸入額は今後ますます増加して
いくと試算されている。これまで、余乳処理対策には年間100万バーツ(約290万
円)以上が費やされてきたが、工場が稼働すれば、これらの経費を削減できるメ
リットも大きいと考えられている。

 また、タイでは、学校が夏季休暇となる期間、1日当たり200トンの生乳が余剰
となり、これが深刻な供給過剰を引き起こす大きな要因となっている。昨年の余
乳処理対策には700万バーツ(約2千万円)が投じられ、余剰生乳の買い上げや
UHT牛乳(日本のLL牛乳に相当)の製造に充てられたとされているが、期待され
たほどの成果は得られなかったと伝えられている。


過剰投資との批判もあるものの、全般に評価は上々

 今回の乳幼児用粉ミルク製造工場の建設には、多額の費用をかけ過ぎていると
の批判も出ている。しかし、その整備が、@消費者に、国産品と輸入品に対する
選択の余地を与えることになること、A生乳が余剰である一方で、乳製品が不足
しているというアンバランスを是正する機能への期待があることなどから、一般
には高い評価が与えられているようである。

 余乳問題は、タイの酪農政策にとって長年の課題となってきただけに、今回建
設される余乳処理施設の動向には、関係者から熱い期待が寄せられている。

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