◇絵でみる需給動向◇
ニュージーランド家畜改良公社(LIC)によると、98年12月末の経産牛頭数 (速報値)は、328万9千頭と前年を2.1%上回った。経産牛頭数は、70年代から 80年代にかけてほぼ横ばいで推移していたが、90年に入り、国際的な乳製品需要 の高まりを背景に増加に転じ、ここ数年、年率4%を超える増加を見せている。 一方、酪農家戸数については、約1万4千戸と前年を2.1%下回る結果となった。 減少の要因としては、中小酪農家を中心に離農が進行する一方、酪農経営の規模 拡大傾向に伴い、初期投資が徐々に高くなってきたことが新規参入を抑制したと している。 ニュージーランドでは、他の酪農先進国を中心に酪農家戸数が大幅に減少する 中、酪農家戸数は90年に入り上昇基調で推移してきた。これは、乳製品の輸出環 境が比較的良好であったこと、生産者乳価が生乳生産を刺激する水準で推移して いたことなどによるものが大きい。 ◇図:経産牛頭数および1頭当たり乳量の推移◇
飼養規模については、70年代から一貫して増加基調にある。特にここ数年は、 年率4%を超える勢いで増加しており、酪農家の規模拡大に対する意欲がうかが える。98年12月末の頭数は、1戸当たり229頭と前年を4.1%上回った。放牧主体 であるニュージーランドの酪農は、投下労働力、設備投資、飼料コストなど酪農 に求められる負担を極力抑えた生産構造であるため、放牧条件さえ整えば規模拡 大を行いやすい環境にある。また、規模拡大に伴う搾乳の機械化など、労働時間 の短縮化や、積極的な草地更新が図られていることも大きい。現地報道によれば、 現状レベルの試算では、肉牛や羊・羊毛生産よりも酪農の収益性が高いとされて いることから、規模拡大化の傾向は今後も続きそうである。 ◇図:酪農家戸数および1戸当たり経産牛飼養頭数の推移◇
昨年、ニュージーランド政府は、海外市場で価格競争に打ち勝つためには、 2010年頃までに1戸当たりの飼養頭数を少なくとも280頭にする必要があるとし ていた。国内乳業メーカー各社も、価格競争力強化のため、合併による生産基 盤の拡大やコストの削減を積極的に進めている。このような中で酪農も、個々 の規模拡大を進めている。過去10年の1戸当たりの飼養規模を見ると、99年は 89年と比較して1.5倍にも規模拡大した。しかしながら、土地の制約や難しく なりつつある酪農への新規参入を勘案すると、今後はこのような急激な増加は 見込めなくなる。一部では、規模拡大のため、大規模農家を中心に中小農家の 取り込みが進んでいる。増加を見せた酪農家戸数は、競争力の強化に連動して、 今後、減少傾向で推移するかもしれない。
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