◇絵でみる需給動向◇
例年、年明けとともに一段落する肉牛価格は、99年に入り若齢牛を中心に上昇 傾向で推移している。2000年3月(速報値)の若齢牛の平均価格(ニューサウス ウェールズ(NSW)州)は、1kg当たり248豪セント(約166円)と、95年6月以来 の高値をつけている。また、肥育牛や経産牛の価格についても、若齢牛価格と同 様に高値で推移している。 現地報道では、豪州国内の牛肉需要が好調であることと合わせて、米国向けを 中心に牛肉輸出が引き続き順調であり、肉牛への引き合いが強くなっている中で、 生産段階での牛群再編に伴い肉牛供給が減少しており、また、ここしばらく続い た降雨により、肉牛出荷が抑制されていることが高値の要因として取り上げられ ている。 ◇図:牛肉価格動向の推移◇
価格上昇を続ける若齢牛の多くは、セールヤードと呼ばれる家畜市場で取引さ れ、セールヤードでの肉牛取引は豪州全体の肉牛流通の4割弱を占めている。 大手フィードロット各社は、契約農家を通しての肉牛調達を主流とするため、 直接的には上昇する肉牛価格の影響を受けないとされている。 しかしながら、セールヤードの価格動向を無視することは、安定した肉牛調達 先を失うことにつながりかねず、フィードロット各社にとっては、契約農家への プレミアムなど新たなコスト上昇への要因が発生せざるを得ない状況にある。 また、昨年から東南アジアや中東諸国向けの生体牛取引が活発化しており、従 来の北部地域を中心とした出荷形態に大きな変化が見え始めている。 中東からの強いオファーを背景に、今年4月には、肉牛生産地帯であるNSW州 から肥育素牛の生体牛輸出が予定されており、フィードロットとの取り合いが予 想されるなど、価格への影響が懸念されている。
3月に行われた豪州農業資源経済局(ABARE)主催の農業観測会議で、豪州牛 肉産業の短中期的な見通しが公表された。この中でABAREは、99/2000年度の肉 牛と畜頭数について前年比6.3%減の853万1千頭、牛肉生産量(枝肉重量ベース) については前年比3.0%減の195万トンを見込んでいる。また、今後の動向につい てABAREは、99年から続く生産段階での牛群再編の動きに合わせ、肉牛の保留傾 向が今後さらに顕著になると見込んでおり、と畜、牛肉生産ともに減少傾向で推 移するとしている。このため、予測では、フードロットへの導入増加に伴い牛肉 生産量は回復するものの、と畜頭数が99/2000年度の水準に回復するのは2002/ 03年度まで要するとの見通しを立てている。 牛肉の需給見通し 資料:ABARE「Agriculture and Regional Australia」 注1:99/2000年度以降は、ABAREによる予測値 2:牛肉生産量には、子牛肉を含む
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