EUの牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○99年の牛肉生産量は前年並み


99年の牛肉生産量、前年比0.1%増

 ドイツ市場価格情報センター(ZMP)によると、EU15ヵ国の99年の牛肉生産量
(枝肉ベース:内臓を含む)は、前年比0.1%増の766万トンと前年並みの水準を
維持した。EUにおける牛肉生産は、牛肉消費の低迷や乳用経産牛を中心にした牛
飼養頭数の減少などを背景として、91年の873万トン(12ヵ国)をピークに、減
少傾向で推移していた。さらに、96年の牛海綿状脳症(BSE)発生による消費減
退に対処するため実施されてきた子牛と畜奨励事業(Calf Processing Aid Scheme)
などの生産抑制策も生産減少の大きな要因であった。しかし、これらの対策も牛
肉消費の回復に伴い順次打ち切られている。

◇図:EU15カ国の牛肉生産量◇


フランス、ドイツは減少、イタリア、アイルランドで増加

 国別に見ると、EU最大の牛肉生産国であるフランスでは、@乳用経産牛頭数の
減少やAアイルランドからの牛肉輸入の増加などから、前年比2.0%の減少となっ
た。フランスに次ぐ生産量を誇るドイツも同様に2.7%減少した。米国や豪州など
他の牛肉生産国と比較して、EUでは経産牛飼養頭数のうち乳用種の占める割合が
高く、乳用経産牛の飼養頭数の増減が牛肉生産の動向に大きく影響する。クオー
タ制度により生乳生産の上限が国ごとに定められている中で、品種改良や飼養管
理技術の進歩により、経産牛1頭当たりの乳量は着実に増加しており、経産牛の
飼養頭数は減少傾向にある。こうした中で、EUの中でも、特に乳用経産牛の比率
の高い、ドイツやオランダなどでは牛肉生産の減少が顕著に見られる。

 一方、国内の乳価が比較的高いため、酪農家の増頭意欲が強いイタリアなどで
は、クオータ制度の下にあるにもかかわらず、経産牛頭数が増加しており、結果
として、牛肉の生産量は4.6%増加した。また、EU域内への輸出を増加させたア
イルランドや、牛肉消費が堅調なスペインなどでも生産が増加した。

主要国別牛肉生産量
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 資料:ZMP
 注1:枝肉ベース、牛肉生産量には内臓を含む
  2:99年は速報値


99年末の介入在庫量、わずか2万トンに

 牛肉生産が前年並みとなった一方、消費はBSE発生前の95年の水準に回復した
とみられており、BSE問題により拡大したEU域内の牛肉需給のギャップはおおむ
ね解消されたとの見方もある。

 介入在庫の動きを見ると、BSEの発生による消費減退により、介入在庫は急速
に増加したが、その後の牛肉消費の回復とともに、加工仕向けおよび輸出向けを
中心に順調に放出が行われ、97年11月をピークに着実に減少している。特に99年
後半には、介入在庫から15万トンがロシア向けの食料援助として輸出されたこと
で、在庫減少に大きく弾みがついた。99年中に通年で50万トン弱が放出された結
果、99年12月末の介入在庫量は2万トン前後にまで減少したとみられている。

主要国別の介入在庫量(99年12月末現在)
be-eu07.gif (4098 バイト)
 資料:EU委員会
 注1:フランスとイギリスは11月末の数値である
  2:( )を除き、製品重量ベース

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