EUの牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○徐々に増加するバターの介入在庫量


低迷が続くバター価格

 EU域内でバター価格の低迷が続いている。指標価格の1つであるオランダのブ
ランドバター価格の動きを見ると、2000年3月には前年同月比1.8%安の6.55ギル
ダー/kg(約310円/kg:1ギルダー=47円)と前月と同額のここ10年来で最も低
い水準で推移している。世界最大のバター輸入国であったロシアが、経済状況の
悪化により、通貨ルーブルの切り下げに追い込まれた98年以降、同国のバター輸
入量は急減した。ロシアはEU産バターの最大の輸出先でもあったことから、EU域
内のバター価格も大きな影響を受けた。99年後半には、@飼料向け需要の回復に
より脱脂紛乳価格が堅調であること、A域内需要の伸びに支えられチーズ生産が
好調なことなどから、乳価が上昇した。これに伴い、バター価格もわずかに上昇
したものの、2000年に入り再び低下した。これは、積み上がり続けるバター在庫
に加え、季節的な増産時期を迎えたことなどが要因とみられる。

◇図:オランダのブランドバター価格◇


12ヵ国で介入買入れを実施

 バター価格は、多くの加盟国で介入買入れの発動基準である介入価格の92%を
下回っており、現在、スウェーデン、デンマーク、オーストリアを除く12ヵ国で
入札による介入買入れが実施されている。介入在庫量は99年に入り急増し、2000
年3月末には前年同月の13倍に当たる6万4千トンに達している。

 なお、3月15日から、夏期の余剰と冬期の不足を調整することを目的とする民
間在庫補助制度(APS)も再開されたことから、余剰分の一部はAPSに流れるも
のとみられている。APSの在庫量は、再開から半月で1千5百トン増加し、3月末で
は1万7千トンとなった。

◇図:バターの介入在庫量◇


クオータの増枠などで在庫は増加する見込み

 99年3月に合意された共通農業政策(CAP)改革に従い、2000年度からギリシ
ャ、アイルランド、イタリア、イギリス(北アイルランド分)の4ヵ国で2年度に
わたりクオータの増枠が行われる。好調な域内消費に支えられ、チーズの生産拡
大が引き続き見込まれるものの、クオータ増枠による生乳生産の増加分の一部は
バター生産に回されるとの見方が強い。域内のバター消費が徐々に減少している
ことに加え、域外からの輸出需要も不調な状況が続いていることから、行き場を
失った余剰分は域内に滞留せざるを得ないこととなる。EU委員会によると、バタ
ーの介入在庫とAPSの合計量は、2000年末には15万トンに達し、2006年末には20
万トンを突破するものと予測されている。

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