◇絵でみる需給動向◇
2000年3月(第3週までの平均)のEU15ヵ国の豚枝肉卸売価格(市場参考価格、 以下「豚肉価格」いう。)は、前年同月比25.0%高の128.4ユーロ/100kg(約 134円/kg:1ユーロ=104円)となった。豚肉価格は99年12月を底に上昇に転じ、 2000年に入って3ヵ月連続で前月を上回るなど回復の兆しが見られる。 EUでは、96年から97年にかけての高水準な豚肉価格を背景として、急速に増産 が進んだ結果、98年以降、一転して生産過剰に陥っていた。このため、豚肉価格 は低迷し、特に98年末から99年初めにかけては、一時90ユーロ(約9,400円)を 割り込む記録的な水準まで落ち込んだ。豚肉価格の低迷の長期化は、養豚農家に 深刻な経営悪化をもたらし、大きな問題となっていた(左図参照)。
2000年に入ってからの豚肉価格の上昇は、生産量の減少が主な要因とみられて いる。EU統計局(EUROSTAT)によると、99年12月現在のEU豚飼養頭数は、1億 2,427万頭となり前年に比べて0.8%減少した。今後の生産動向に影響を与える繁 殖雌豚頭数は、前年比2.4%減の1,268万頭に減少している(詳細は資料編35ペー ジ参照)。 ◇図:EUの豚総飼養頭数◇ また、99年10月から2000年9月までの豚と畜頭数は、前年比1.0%減の2億775万 頭になるものと推定されている。ただし、国別の豚と畜見込み頭数は、イギリス (同9.5%減)、オーストリア(同7.6%減)など10ヵ国で減少する一方、労賃や 飼料価格など生産コストが比較的低いスペイン(同2.4%増)や業界の再編で効 率化が進んでいるデンマーク(同2.3%増)では依然増加するとみられており、 状況に差が見られる。 ◇図:豚と畜頭数の増減比◇ 豚肉価格の低下とポンド高による域内からの輸入急増により、厳しい状況にあ ったイギリスでも、2000年3月12日現在の豚肉市場価格が枝肉1kg当たり90ペンス (約156円:100ペンス=173円)まで回復した。養豚農家の損益分岐点となる豚 肉価格は約95ペンス(約164円)とみられており、約2年間続いた生産コスト割れ の状態からようやく脱却できる水準に近づきつつある。
EU委員会は、98年後半以降、これまで豚肉需給対策として講じてきた豚肉 民間在庫助成を解除するとともに、豚肉の輸出補助金を順次引き下げてきた。ま た、最近の価格動向を受けて、3月14日には、豚肉輸出補助金をさらに約12.5% 引き下げることを決定した。 ただし、豚肉の需給バランスの回復については限定的であるとの見方も依然残 っている。豚肉の需給に影響を及ぼす要因として、環境規制の強化、衛生問題な どに加え、支持価格の引き下げに伴う牛肉価格低下の影響など不確定なマイナス 要素が指摘されており、バランスの回復に向けて十分な条件が整ったとは言い切 れない。
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