海外駐在員レポート 

アルゼンチンの食肉処理加工施設の概要 −食肉輸出業者の衛生管理の取り組み−

ブエノスアイレス駐在員事務所 浅木仁志、玉井明雄




1 はじめに

 前回(本誌2000年2月号)のレポートでアルゼンチンの牛肉流通事情を紹介し
た。レポートの内容について多くの質問を受け改めて問題意識が啓発された。例
えば取扱量の多いと畜サービスの実態、JUNTA(フンタ)格付けシステムの価格
への影響、食肉処理加工業者の正確な分類などである。

 今回はこうした疑問点に答えることを念頭に、農畜産品衛生事業団(SENASA
:セナサ)と4ヵ所の食肉処理加工業者の施設取材を試みた。取材した食肉処理
加工業者はいずれも国内販売も行う食肉輸出業者であり、食品の安全性に対して
は関心も高いことから衛生状況の把握も重要と考え、これらの施設の衛生、品質
管理の概要を中心にレポートした。

 取材した施設はいずれも開放的かつ好意的で、最初の施設の取材に時間がかか
り、次の施設に3時間以上も遅れて到着したが、時間外にもかかわらず担当の方
から親切に対応していただいた。なお、訪問先の概要については、本レポートの
最後に参考としてまとめた。


2 食肉処理加工業者の概要

(1)食肉処理加工業者の分類

 セナサ決議4238/68(食肉処理加工施設の基本的な衛生管理条件などを定めた
規則)による食肉処理加工業者の分類を以下に示す。

@フリゴリフィコ:保管庫(冷凍、冷蔵)を所有している業者の総称。

Aマタデーローフリゴリフィコ:と畜を行い、かつ、保管庫(冷凍、冷蔵)を所
 有している業者で、枝肉だけでなく部分肉や加工肉を生産するものも含まれる。

 今回と前回のレポートで食肉処理加工業者と表現しているのは上記の2つを総
称して指している。

 同決議では、この国で一般的な食肉処理加工業者である上記Aのマタデーロー
フリゴリフィコを便宜上、以下のように分類している。
ア○マタデーローフリゴリフィコ“A”:セナサの認定を受け、製品を国内全域
に販売でき、輸出もできる業者。高い衛生基準を満たしEUや米国に製品を輸出で
きる輸出業者はこの分類に入る。
イ○同“B”および“C”:と畜規模がAより小さく、原則として、製品の販売
が州内に限られるもの。セナサの認定を受ければ、どちらも国内全域での販売が
可能で、特に“B”は要請される衛生条件の緩い国への輸出が可能となる。
ウ○地方のと畜場:上記“C”よりさらにと畜規模が小さく、セナサが認めた地
域以外では販売できない業者。

 同決議以外の分類として、アルゼンチン食肉産業協会(AIAC)は、前述のマ
タデーローフリゴリフィコの施設をシクロ(サイクル)1施設(特にと畜から加
工品製造までを一貫して行う施設をシクロコンプレットと呼ぶ場合もある)、と
畜はせずに半丸や4分体を購入し、輸出向け、国内向け(特にホテルやレストラ
ン、病院などの公共施設)に部分肉などを製造販売する施設をシクロ2施設と呼
んでいる。

 仲買人としての直接委託取引業者(ガンチェロ)や食肉処理加工施設のと畜場
を利用すると畜業者(マタリフェ)は、生産者から家畜を預かりあるいは購入し、
と畜、処理加工、販売を行う。彼らは自らと畜場を持たないので、食肉処理加工
業者のシクロ1施設でと畜と枝肉にするまでの処理のサービス(と畜サービス)
を受ける。

 彼らガンチェロやマタリフェに対する、食肉処理加工業者のシクロ1施設での
と畜サービスによると畜頭数が総と畜頭数に占める割合は約6割でかなり多いと
思われる。どのような施設でと畜サービスが行われているかは具体的なデータは
ない。しかし、複数の業者から以下の特徴的な話が聞けた。

・「と畜サービスをすると、自社買い付けの枝肉と分別する必要があるので作業
 効率は落ちる。と畜サービスは確実に金になるので、経営が苦しいときはその
 取扱量が増える傾向にある。と畜サービス主体の業者は中小の経営の芳しくな
 い業者ではないか。」

・「中小の業者とは限らない。代表例がリオプラテンセ社で、と畜サービスが主
 体。恐らく取材されたすべての施設は過去と畜サービスをしていたはず。当社
 も過去やっていた。量的には全処理枝肉の5〜10%くらいだろう。」

・「と畜サービスの枝肉はすべて国内販売用。輸出に力を入れ経営も伸びている
 業者は、当然と畜サービスから脱却する傾向にある。」


(2)認定制度

 食肉処理加工業者はセナサ認定と国立農牧取引管理事業団(ONCCA:オンカ)
認定の2つに関わる。大ざっぱに言って、セナサは各業者の施設の衛生面に関し
業者ごとに認定するのに対し、オンカは業者の営業許可の認定や税金に関する登
録といった性格を持つ。オンカの登録番号がないと営業できない。

 99年現在、セナサに認定されている食肉処理加工業者は210業者、うち59業者
は経営不振か倒産したかで実際稼動しているのは151業者である(表1参照)。セ
ナサは、いわゆるマタデーローフリゴリフィコのうち主として国内販売も行う輸
出業者のマタデーローフリゴリフィコ“A”を衛生面で管理、監督し、と畜頭数
などを記録している。セナサ認定の151業者のと畜頭数は約1千40万頭(99年)で
アルゼンチンの牛と畜頭数の約9割を占める。上位30業者でと畜頭数の過半を占
めるが、米国などに比べ寡占が進んでおらず、経営の効率化が求められるゆえん
である。

 99年現在、オンカに認定(登録)されている食肉処理加工業者はと畜場を所有
する333業者(と畜サービスのみを行う業者も含む)で、セナサ認定の約145業者
が含まれている。オンカ認定業者の総と畜頭数は約1千2百万頭である。そのほか、
オンカはと畜場を所有しないと畜業者マタリフェや仲買人ガンチェロも登録対象
とし、その数は約700以上といわれている。

表1 セナサ認定業者(抜粋)のと畜規模(99年)
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(3)食肉処理加工業者の輸出額ランキング

 アルゼンチン農牧水産食糧庁による99年の牛肉(内臓を含む)輸出額のランキ
ングでは、上位10社が、輸出額全体の約75%を占めている。上位5社の顔ぶれと
ランキングは昨年と同じであるが、上位3社が軒並み前年比で輸出額が減少した
のに対し、4位のフィネックスコール社が29%、5位のクイックフード社が30%の
増加となった。また、99年におけるヒルトン枠の新配分方法で地方や中小への配
分が増加したことなどにより、コルドバ州のエスタンシアスデルスル社は、40位
から6位へと大きく躍進している(表2参照)。

表2 食肉処理加工業者の牛肉輸出額ランキング(99年)
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 資料:アルゼンチン農牧水産食糧庁
 注1:輸出額はFOBベース、輸出量は製品重量ベース。
    ( )は98年の輸出額の順位。
  2:1ドル=108円


(4)JUNTA(フンタ)格付けシステムの活用

 前回のレポートでフンタ格付けシステムにつき概説したが、日本の格付けのよ
うに枝肉の販売価格などに直接反映するものなのか、その性格をレポートする。

 セナサによると、フンタ格付けは旧食肉事業団が実施していたもので、同事業
団が廃止されたため、91年以降既存システムをそのまま引き継ぐ形でセナサに業
務が移管された。同事業団の行った格付けは強制的だったが、セナサが引き継い
でからは任意となった。実際には食肉処理加工施設のライン上で、研修を受けセ
ナサが認定した施設の職員が格付けを行う。任意なので格付けを行わない業者も
あるが、セナサ認定の輸出業者はすべて導入している。

 格付けは、生体段階で雌雄の区別をした後、枝肉評価を行う。格付け結果は、
枝肉の状態によって決まる。チェックポイントは、筋肉の形と量、特に後肢の肉
付き、ロインの長さ、5段階で表示される脂肪の乗り具合などである。また、と
畜時年齢は、国内向けは軟骨の量で調べるが、チリ向けは永久歯の数で判断する。

 格付け結果の活用について業者サイドの話では、@庭先直接取引きの場合、業
者は枝肉歩留まりに応じて生産者に支払うのでその際の目安に使う、A施設内で
の仕分けや出荷先を決める際に使う(国内向け、輸出向け、高級部位、加工用な
ど)、B国内向けの場合、スーパーや食肉専門店などの小売りへは枝肉搬入が一
般的で、買い手は品質の情報を求めるのでそれに応じるために使うなどであり、
格付け結果は、国内向けの製品価格にはある程度反映されるようである。

 前述したように輸出向けはフンタ格付けを行うのが通常であるが、一般に輸入
国は自国の格付け基準を要請し、中には自国の格付け検査員を派遣する国もあり、
アルゼンチンの基準で行うフンタ格付けの結果は、輸出向けの枝肉評価にほとん
ど反映されないようである。


3 食肉処理加工業者の衛生管理の実態

(1)食肉処理加工施設における農畜産品衛生事業団(セナサ)の衛生、品質管
  理の概要

 ここでは輸出業者の衛生管理の一般的な事項についてレポートする。輸出業者
の各食肉処理加工施設に課せられる衛生、品質管理のスキームは、セナサ決議の
4238/68に定められた基本的な衛生、品質条件と輸入国が要請してくる衛生、品
質条件の2つを満たす必要がある。前者の基本的な条件には、施設が守るべき製
造および品質管理に関する基準(GMP)や衛生標準作業手順書(SSOPs)の衛生
管理プログラムがあり、輸入国、特に米国から要請される条件には危害分析重要
管理点システム(HACCP)による衛生管理プログラムがあると考えられる。要す
るに基本的な衛生、品質管理をきちっとした上で、輸入国のどのような注文にも
応じるというスタンスである。

 セナサ決議4238/68は、毎年必要な改正と追加が繰り返される31章からなる膨
大な決議であり、詳細をここに紹介することはできないが、大まかな構成は以下
の通りである。

○セナサ決議4238/68の構成
第1〜2章:(省略)
第3章:と畜場における衛生を考慮した建築、設計基準
第4章:廃水処理と廃棄物処理
第5章:冷蔵庫、冷凍庫の設備と衛生
第6章:補助施設の設備と衛生
第7章:衛生および品質検査室
第8章:セナサの検査官の任務など
第9章:施設の義務
第10章:と畜前検査
第11章:と畜後検査
第12章:内臓の取り出し
第13章:部分肉整形作業
第14〜17章:脂肪、肉、塩蔵、保存のやり方と扱い方
第18章:調味料や添加物
第19〜25章(省略)
第26章:箱詰めとラべリング
第27章:輸出衛生許可(仮称、CSE)など衛生に関する認定許可とその手続き
第28章:輸送
第29章(省略)
第30章:罰則
第31章:GMPとSSOPsの適用
 各施設にはセナサの職員が常駐し、前述の2つの衛生、品質条件の管理、検査、
監督に携わっている。セナサ職員による監督が製品輸出の必要条件である。

 一般的なセナサ職員は2名の獣医師と約10名の助手で、それに数名の施設側の
補助員のトータル約15名で構成され、これに部分肉整形部門以降の工程の検査員
が加わる。例えばセパ社の施設では22名のセナサ職員が働いている。

 各処理工程での具体的な検査内容などは次項に譲るが、セナサの物理化学検査
の基本は、セナサ決議4238/68による検査に加え、各輸入国が要請してくる検査
項目のコンビネーションである。物理化学検査は施設内のセナサ認定の検査室で、
または民間のセナサ認定の検査機関に検査を委託する形で行われる。セナサの認
定を受けた検査機関は1つのネットワークを構成している。セナサの認定は検査
項目とその検査を担当する施設の職員ごとに対してなされ、この職員が検査に全
責任を持つ。正確には検査室自体が認定されるわけではない。一般に施設の検査
室で検査できる項目は限られているのが現状で、化学分析の多くは外部に委託す
るようである。

 施設の検査室で検査される項目には次のようなものがある。
サルモネラ、大腸菌、リステリアなどのバクテリア検査、特にEU諸国が要請して
くる、ある特定の合成ホルモンの検査(アルゼンチンでは一般にホルモンは使用
されていないといわれている。なお、アルゼンチンの場合、ホルモン剤の不使用
が証明されないとDTAとよばれる家畜移動許可書が下りないので生産段階でチェ
ックがかかっている)、そのほか、施設用水のバクテリア、塩素含量などの水質
検査などである。外部に委託される検査として殺虫剤、抗菌剤、重金属の残量検
査などがある。

 サンプル採取は抜き取りで行われる。抜き取り頻度は輸入国の要請に従う。そ
れ以外は検出頻度や生産地域の衛生事情などを勘案してセナサが抜き取り頻度を
定める。何年検査しても検出されない場合は、抜き取り検査からセナサ本部が検
査項目を各施設に直接ファクシミリで指示する方式に切り替えられるとのことで
ある。


(2)食肉処理加工施設におけるHACCPの導入

 GMPとSSOPsの衛生管理プログラムが円滑に機能していることがHACCP導入
の前提条件である。基本的にHACCPが導入されていなければ輸出はできない。

 施設のHACCPの導入手順は以下のようである。

@施設の衛生担当がリーダーとなり各部門の専門家によるチームを作る。

Aこのチームがその施設の特徴を考慮しながらリスクの高い箇所を拾い上げ、重
 要管理点を決めマニュアル(流れ図)を作る。

Bマニュアルができた時点でセナサの助言、認定を受ける。

C実際にマニュアルに沿って衛生管理を行い不備な点、実施可能性などを施設側
 がチェックする。

D必要に応じマニュアルを作り替え、再度セナサの認定を受ける。

E毎年セナサの検査が入るほか、米国などの輸入国も年に数回査察に来る。

 このようにHACCP導入の特徴は、施設側がその施設の特徴を踏まえた上で主体
的に実施可能な計画を立てることにある。HACCPは施設が主体的に行う衛生管理
で、衛生、品質の向上に施設が責任を持つ体制であると言える。GMPなどのよう
な上からの強制的な管理ではなく、セナサは施設に助言と認定のみを与える。

 HACCP導入の利点は、従来に比べ不合格品が格段に減ったこと、施設の職員の
衛生に対する認識が深まったこと、記録が残るので、実施したことの成果が計れ、
問題が起これば直ちに対処できることなどである。


(3)施設の各処理工程におけるセナサの検査およびHACCPの実施状況

(荷受、と畜前)
  
 取材したのはすべて輸出業者の施設だったので、施設への搬入牛の約7割以上
が荷受人やブローカーを通さず生産者から直接購入されていた。生産者から直接
購入するとEUのヒルトン枠輸出の要件である原産地の特定が可能になり、かつ、
衛生的にも問題が少ないからである。汚染防止などのためEUはと畜前の牛は屋根
付きの牛舎に係留させることも要求する。

 搬入した牛はトロッパと呼ばれる群番号が付けられ、搬入元(原産地)ごとに
群管理される。その後、と畜順序が決められと畜の通し番号が付けられる。この
トロッパ番号と通し番号は製品になるまでついて回る。

 搬入後おおむね12〜24時間以内にと畜されるが、と畜はセナサのと畜許可が必
要となる。と畜前は少量の塩素入りの水シャワーで洗浄するとともにストレスを
軽減する。 

 この段階では獣医師が目視で異常のある牛をチェックし、異常牛は直ちに隔離、
体温測定される。最近は見た目に異常である牛はほとんどおらず、怪我をした牛
や長距離輸送に耐えられず死んでしまった雌牛がいる程度という。

(と畜からはく皮まで)

 と畜方法は、打額または電撃により失神させた後、後肢の1つを吊り下げ喉を
切り放血させる。消毒用の湯槽は各作業場ごとに設けられ82度以上に保たれる。
以降の工程は以下の通り。なお、CCPはHACCPの重要管理点を表す。

@食道(または噴門)結紮(けっさつ)(CCP)

Aと体に電気を通し筋肉の緊張弛緩により放血を促進する。順調な放血は肉の柔
 らかさとpHに関係するという。

B皮はぎの前処理(CCP)。ここで汚染を防ぐことが重要。1頭処理するごとに手
 洗いとナイフなどの道具の洗浄、消毒を励行。皮用と肉用のナイフなどは区別
 される。

C直腸結紮(CCP)

D頭を落とす

E肉に皮の表面がつかないよう工夫されたローリング式(いわゆるダウン式)の
 皮はぎ機で完全に皮をはぐ。

 なお、食道と直腸の結紮は消化器の内容物が排出されないようにする措置であ
る。
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【直腸の結紮の作業とそれを
自動的に行う最新の機械】
(半丸まで)

 内臓は全数検査する(CCP)。

 内臓検査は、内臓触診後切って中を調べる。頭(リンパ節、舌と口の粘膜)、
肝臓と肺(寄生虫、リンパ節)、腸(各種寄生虫、リンパ節)、心臓(リンパ節)
をチェックする。枝肉はリンパ節、血の固まりなどをチェックする。内臓検査と
平行し枝肉はチェーンソーで半分にカットされる。ライン上で頭、内臓、半丸が
1列に平行して流れる設計なので、どこかの部位に問題があれば即座にこの3つが
集められる。問題のある半丸はラインから外され、精密検査後全部廃棄か部分廃
棄か、仕向けなどセナサの検査官が決定する。問題のあるものはいかなる仕向け
でも輸出用にはならない。なお、不合格品は家畜移動許可書(DTA)から生産者
までたどれ、その情報はファイルされセナサ本部に送られる。この段階での廃棄
率は去勢牛で0.5%、老廃牛の内臓の約2割は何らかの異常があるという。
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【内臓検査をするセナサの検査官
(緑のヘルメット)とその助手】
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【枝肉表面の蒸気噴霧と
掃除機による洗浄】
 半丸は水で洗浄後、蒸気をあてながら表面を掃除機で清掃され(CCP)、計量、
格付け、セナサの検査済み印が押される。次の写真では上からフンタ格付け結果
(U2)、トロッパ番号(26639)、輸出向け(ES)、半丸重量を表す施設内記号
(Pは170kg以上を示し、米国向けである)で、右はセナサの検査済みの印。その
ほか、業者によってはと畜日、歯の数(チリ向けの場合のみ)が押印される場合
もある。
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【枝肉後肢に押された格付けなど】
 その後、EU向けは肉の中心温度2度で24時間、米国向けは4〜10度でおおむね
36時間チャンバー内で熟成される(CCP)。国内向けは半丸になった時点で出荷
する場合が多い。

(部分肉の整形前まで)
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【アサード部位(アルゼンチン一般
大衆の間で炭火焼き料理としての
需要が多い)】
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【ピスト-ラ部位(ストリップロイン、
テンダーロイン、ランプなど解くに
EU向け高級カット肉としての需要が
多い)】
 半丸は一般に前半分、アサード、後半分(高級カット部位のピストーラ)に大
きくカットされる。この時点で詳細な仕向けが分かるので部分肉への原料供給ラ
インと考えられる。カット肉は品質別出荷先別にチャンバーに保管され、肉の中
心温度7±3度で前半分は36時間、ピストーラは48時間(以上米国向け)、ヒルト
ン枠は24時間熟成される。pHは口蹄疫ウイルスが生存しないよう5.8以下(米国)
または5.9以下(EU)が要求され、これは全数チェックされる。pHおよび温度管
理はCCPである。
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【ロース部位の断面。
赤身肉であることが分かる。】
(部位肉整形以降)
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【部位肉成形作業風景】
 チャンバーから出された前半分、アサード、ピストーラは部分肉整形前に大ま
かに脂肪などが除去され、金属片の付着などが目視チェックされる(CCP)。ひ
とまとまりごとにインターバルをおいて整形作業されるので、どのトロッパのど
の牛を整形しているのか把握できるようになっている。整形は輸入国のスペック
に合わせる。
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【ロイン部位のスペックの違い。
上が米国向けで、下がドイツ向け。
米国向けはリップ部分(背鋸筋など)
を付けたままで輸出する。】
 冷蔵肉は真空パックされ、最後に湯に漬けて引き締める。真空パックの状態と
真空度の保持がCCPで、箱詰めの際、ラベルの接着具合もチェックされる。
 部分肉の検査は目視検査が効果的で重要だという。
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【真空パックされた冷蔵肉】
(その他)

 缶詰やハンバーグ、パテなどの加工製品を製造できる業者は、セナサ認定業者
のうち数社に限られる。肉を煮沸する際に浸出する肉汁を固めてスープの素を作
ったり、利用できるものはすべて利用している。

 ここでのCCPは、肉の煮沸チャンバーや加熱釜の温度、圧力、時間の管理、缶
詰の密封度と強度、破損の検査、製品への金属混入の防止、製品ラベルの貼付チ
ェックなどである。特に、ハンバーグなどパテ類の製造には作業室を約8度の低
温に保つことが重要である。


4 おわりに

 今回は食肉処理加工施設を取材し、衛生管理を中心にレポートした。取材した
施設は輸出企業で高い衛生基準を保持している施設ばかりだった。国内向けのみ
を扱う施設やシクロ2施設の取材は今後の課題となった。牛肉生産の9割近くが国
内で消費されるこの国で、実際に住んでいる者として国内向け製品の衛生管理が
気になるところではある。

 施設関係者に日本のフーデックスに参加し帰国したばかりの人もいて逆にこち
らが質問を受けることもあり、予想以上に彼らの衛生意識や輸出意欲は高いと感
じた。将来に向けては、輸送距離、時間の長さをどのような輸出品目で克服する
か、日本の細かい製品仕様の要請に根気よく対応できるか、過度に楽観的になら
ず本当に商品開発に努力できるかの3点にかかると思うがどうだろうか。

(参考)訪問施設の概要

1 訪問先の業者名および施設立地場所
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2 業者別ランキング(99年)
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3 訪問先施設での調査内容(聞き取り)
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