米国の輸出食肉に対する残留検査等の実施体制を承認(EU)


米国産牛肉等に対する輸入禁止措置は実施されず

 EUの常設獣医委員会は3月9日、EUへ輸入される食肉および食肉製品中の成長ホ
ルモンなどの非承認物質に関する検査ならびに承認されているが残留の上限値が
定められている動物用医薬品に関する残留検査について、米国の実施体制がEU基
準を満たすものに改善されたことを正式に認めた。この結果、十分な改善がなさ
れない場合に予定されていた米国産食肉・食肉製品に対する全面輸入禁止措置は、
実施されないことになった。

 EUでは、天然型か合成型かを問わず、成長促進剤としてのホルモンの使用は禁
止されており、成長ホルモンを使用した牛肉の輸入も禁止されている。しかし、
昨年4月、米国産牛肉および肝臓のサンプル検査を行ったところ、その12%に成
長ホルモン(トレンボロン、ゼラノール、メレンゲステロール)の残留が認めら
れたことから、米国側のチェック体制の不備が判明し問題となっていた。EU委員
会は昨年4月30日、米国が十分な改善措置を講じない場合、同6月15日以降、米国
産の食肉等の輸入を禁止することを決定(委員会決定1999/301/EC)した。そ
の後の米国の対応状況を勘案し、輸入禁止の開始時期は3度延期され、最終的に
は本年3月15日からとなっていた。


米国は、残留モニター計画を改善・更新

 EU理事会指令(96/23/EC)では、家畜・畜産物に関し、加盟国およびEUへの
輸出国が、非承認物質を含まず残留基準以上の特定物質を有しない旨を保証する、
残留モニター(監視)の実施を義務付けている。また、残留モニター計画はEUか
らの改善要求に基づき更新されることが求められる。EUは、昨年6月および11月
と本年1月の3回にわたり、米国でホルモン非投与牛肉の生産体制に関する調査を
実施した。1月の調査で残留検査法に改善が必要と指摘されたことを踏まえ、米国
は残留モニター計画(特に特定の残留検査の外部委託が可能な検査機関について)
を改善の上、更新した。米国の指定検査機関における検査体制が整うまでの間は、
適切な検査が実施できるほかの検査機関に委託することとしており、委託契約手
続きを進めている。


見直しが期待される輸入禁止に対する補償措置

 なお、EUのホルモン牛肉の輸入禁止措置については、98年2月に世界貿易機関
(WTO)により衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)違反と裁定さ
れたが、EUは健康を害する恐れがあるとして、その後も輸入禁止を継続している。
このため、米国およびカナダはそれぞれ昨年7月29日および8月1日から、EU産食
肉・食肉製品などに対し100%の報復関税を適用するという制裁措置を発動した。
内容はそれぞれの国の損害額とされる1億1,680万ドル(126億円:1ドル=108円)
および1,130万ドル(12億円)を基準に決定されたが、トリュフ、フォアグラ等の
特産品も対象とされた貿易被害はEU側にとって甚大である。

 EU、米国ともにこのような制裁が建設的でないことを認めており、米国は、市
場の確保に資するため、成長ホルモン非投与牛肉の輸出体制整備を進めてきた。
今後は、非ホルモン牛肉のEUへの輸入アクセスが改善されると考えられることか
ら、EUでは、ホルモン牛肉の輸入禁止措置に対する補償(制裁)のあり方につい
て、米国との間で話し合いが開始されるものと期待されている。

元のページに戻る