99年のブラジル鶏肉輸出量は前年比26%増


レアル切り下げによる輸出競争力の強化などが要因

 ブラジル鶏肉輸出業者協会(ABEF)の報告によれば、99年の鶏肉輸出は、レア
ル切り下げによる輸出競争力の強化、アジアや欧州の需要回復、新規市場の開拓
などにより、輸出量が前年比26%増の77万6百トン(製品重量ベース)、輸出額
(FOBベース)が19%増の8億7千5百万ドル(945億円:1ドル=108円)となった。


輸出価格は前年比6%安

 しかし、1トン当たりの平均輸出価格は前年比6%安となり、特に、第4四半期
(10〜12月)の価格は、前年同期比19%安と大幅に落ち込んだ。ABEFのフルラン
会長によれば、第4四半期の価格低下の背景には、新規の食肉輸出業者が仲介業
者を通じ低価格で輸出したことなどがあるとしている。


丸どりは中東向け、部分肉はアジア向けが主体

 ABEFによる99年の丸どり・部分肉別輸出概況は、以下の通りである。

(丸どり輸出)

  アルゼンチンが低廉なブラジル産鶏肉に対し、輸入数量規制を行ったこともあ
り、メルコスル(南米南部共同市場)向け輸出は、前年比18%減の4万5千トンと
なった。しかし、サウジアラビア向けが30%増の20万8千トン、クウェート向け
が72%増の3万5千トンとなり、中東向け輸出は、39%増の31万5千トンとなった。
また、アジア向け輸出も22%増の1万9千トンとなったため、99年の丸どり輸出量
は、前年比16%増の42万2千トンとなった。輸出額は、1トン当たりの平均価格が
4.5%安となったため、11%増であった。

(部分肉輸出)

 部分肉の主要な輸出先である日本向けと香港向けが、それぞれ前年比39%増の
9万7千トン、38%増の9万4千トンとなり、アジア向け輸出は、44%増の21万8千
トンとなった。欧州向け輸出は、スペイン向けが9%減の1万9千トンとなったも
のの、ドイツ向けが17%増の1万9千トン、オランダ向けが2.2倍の1万7千トン、
イギリス向けが77%増の1万6千トンとなった。このため、99年の部分肉輸出量は、
前年比41%増の34万8千トンとなったが、1トン当たりの平均価格は10%安となり、
輸出額は27%増にとどまった。

ブラジルの鶏肉輸出量と輸出額
brasil.gif (4820 バイト)
 資料:ブラジル鶏肉輸出業者協会
  注:四捨五入の関係で、必ずしも合計とは一致しない。


2000年輸出量、15%増と強気の予測も

 2000年のブラジル鶏肉輸出予測について、ABEFのフルラン会長は、付加価値の
高い部分肉の輸出増加傾向、メキシコやカナダなどの新規市場開拓などにより、
輸出量は99年を15%上回り、価格が5%回復すれば、輸出額は10億ドル(1,080億
円)に達すると予測している。一方、同国大手のセアラ社の副社長は、トウモロ
コシ価格の上昇による鶏肉生産コストの増加と国内鶏肉価格の低下により、生産
減少も予想され、輸出は大きく増加しないとみている。


アルゼンチンとは鶏肉貿易摩擦が深刻化

 好調なブラジル産鶏肉の輸出状況とは裏腹に、ブラジルとアルゼンチンの間で
は鶏肉の貿易摩擦が深刻化している。

 本年2月28日、ブラジルとアルゼンチンは食品安全基準に関する農業首脳会議
を開催した。その中で、ブラジル産鶏肉の輸出衛生基準が協議されたが、アルゼ
ンチンはブラジル産鶏肉に対し従来からの国単位の無菌証明(Aフォーム)に加
えて、ロット単位での無菌証明(Bフォーム)の提出義務を要求した。

 数年前からアルゼンチン鶏肉業界は、ブラジル産の安価な鶏肉に脅威を抱いて
おり、最近では、ブラジルの鶏肉輸出についてダンピングと問題視し、アルゼン
チン政府に対応を迫っていたが、今回のアルゼンチン政府の要求が、どのような
影響を及ぼすか成り行きが注目されている。

 なお、両国間の畜産物貿易問題は鶏肉以外にもあり、ブラジル産の豚肉輸出に
ついては、アルゼンチンの養豚農家が補助金付きダンピングと非難し、逆にアル
ゼンチン産の生乳輸出については、ブラジル側がダンピングとの疑念を抱いてい
る。

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