MSAの事業計画を一部見直し(豪州)


大手スーパーは導入に難色

 豪州では、牛肉の新たな格付制度となる、ミート・スタンダード・オーストラリ
ア(MSA)の全国展開が進められているが、この推進母体である豪州食肉家畜生
産者事業団(MLA)は、2月末、MSA事業計画の一部見直しを発表した。

 これは、牛肉小売りの過半を占める大手スーパーの積極的な協力が得られない
ためとしており、MLAは、当面、食肉専門小売店を中心にMSAの事業展開を進め
ざるを得ない状況となっている。

 MSAは、牛肉の食味保証と消費拡大を目的として開発された新しい牛肉格付制
度であり、膨大な食味試験の結果と分析に基づき、肉牛生産農場から、輸送、と
畜、流通保管の段階に至るまで多くの厳しい基準を設定し、これをクリアした牛
肉(部分肉)のみをMSA牛肉として販売するという事業である(詳細は「畜産の
情報(海外編)」2000年2月号を参照)。MSAは既に、クインズランド州および
ニューサウスウェールズ州で開始されたほか、3月末には西オーストラリア州、
6月にはビクトリア州でも開始される予定となっている。


食肉専門小売店、消費者には好評

 これまでのところ、MSA牛肉に対する消費者の評価は高く、食肉専門小売店を
中心に、牛肉の売上げが目に見えて増加したという報告が多い。

 ところが、国内牛肉小売販売の約55%を占める大手スーパーがMSAへの積極的
な協力に難色を示し、順調に見えたMSA事業計画に思わぬ支障が生じている。

 豪州の大手スーパーは3社に代表されるが、現在、このうちの2社は店舗を限っ
てMSA牛肉を販売しており、残る1社は取り扱っていない。また、販売を実施し
ている前記の2社についても、実際の食肉売場ではMSA牛肉よりも、自社開発ブ
ランドの牛肉を全面に打ち出しており、多くの食肉専門小売店がMSA牛肉を大々
的に宣伝しているのとは対照的である。


客観的な品質保証システムとしては評価

 大手スーパーがMSA導入に消極的なのは、MSAが全国統一ブランドとなると、
大手スーパーの食肉専門小売店に対する販売優位性が損なわれるためとみられて
いる。

 確かに、MSAは、これまで顧客との信頼関係に依存していた小規模な食肉専門
小売店にとって、客観的かつ有効な品質保証手段となり、販売を優位に進める手
段となる。一方、既に自社ブランドを確立している大手スーパーにとっては、M
SAの推進は自社ブランド製品の販売戦略を否定することにつながる。

 ただし、これら大手スーパーは、客観的な品質保証システムとしてのMSAの意
義は高く評価しており、既に自社ブランド製品の規格にMSAの品質管理基準の一
部を取り入れ始めている。


MSA業の成功は、業界全体の協力が不可欠

 MSAは、牛肉の食味保証と消費拡大を目的とした事業であるため、仮に大手ス
ーパーの積極的な協力が得られなくても、その品質保証システムが有効に活用さ
れ、牛肉消費が拡大すれば当初の目的は達成されるとも言える。しかし、今回の
事業計画の見直しに示されたように、MSA事業としての採算は、小売部門を含め
た業界全体の協力がなくては難しいとみられている。MLAは、MSA事業への協力
をめぐる大手スーパーとの交渉を今後も続けるとしており、その成り行きが注目
されている。

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