酪農乳業改革法案が成立(豪州)


各州政府の合意もあり改革実施が事実上確定

 豪州連邦議会では、3月16日、酪農乳業改革法案が与野党賛成により成立した。
これにより、本年7月1日から酪農乳業改革(生乳生産販売の完全自由化と酪農家
所得補償)が実施されることが事実上確定した。

 本法案の採択に先立つ3月3日、各州政府の農業大臣は、メルボルンで開催され
た会議において、連邦政府提案の当該改革を実現すべく、各州の飲用乳制度を撤
廃することに基本合意した。この会議では、飲用乳制度の恩恵に浴しているニュ
ーサウスウェールズ(NSW)州、クインズランド州および西オーストラリア州が
最後まで反対したが、単独でも撤廃を実施するというビクトリア州の強硬な姿勢
を前に、やむなく足並みをそろえることとなった。

 ただし、各州の農業大臣は、合意に当たり、@酪農乳業制度改革が地域社会に
及ぼす影響を十分に監視すること、A地域対策を協議する特別委員会を設置する
こと、B各州の食品安全対策について検討を加えることを条件として付記した。

 さらに、改革の影響を受ける地域社会への対策として、地域救済計画や農業地
域計画などの既存の諸政策が機能すること、連邦および州政府がこれらの諸政策
について各地域に周知徹底させることについても、併せて確認した。


特定地域対象の追加補償を盛り込む

 連邦政府は、この基本合意を受け、法案成立に向けての作業を進めていたが、
成立のキャステングボードを握る野党から、連邦政府の財源支出による補償の上
乗せを求められ、各州政府からも、新たな補償制度を求める声が強く挙がってい
た。このため、連邦政府は、酪農廃業者への廃業補償を含め総額17億4千万豪ド
ル(約1,166億円:1豪ドル=67円)としていた補償とは別に、酪農乳業改革の実
施によって大きな経済的影響を被る特定の地域社会を対象に、雇用確保や社会サ
ービス維持などの面で行政的な援助を行う内容を盛り込んだ4千5百万豪ドル(約
30億1千万円)の追加補償を決定した。この補償の財源については、当初8年間と
していた課徴金の賦課期間を延長し、捻出されることとなった。

 なお、追加補償の運営管理は、雇用・職場関係・中小企業省(DEWRSB)によ
り行われる。


援助金査定委員会を設置

 連邦政府は、具体的な補償金支給に向けて、3月29日、補償金支給の準備を行
う援助金査定委員会(DAP)を発足させ、5名の委員を任命した。委員長には農
業経済分野の法律専門家を指名し、豊富な経験に基づく厳正な補償金受給資格の
決定を期待している。
 
 なお、最終的には、酪農調整機関(DAA)の設立を待って同機関に作業が移行
される予定である。DAAは、DAPの活動を引き継ぎ、補償金受給資格の審査や、
実際の賦課金の徴収、補償金支払いを管理する。

 補償実施の前提とされている各州政府の飲用乳制度の撤廃については、各州議
での議決はされていない。しかしながら、基本合意が成立していることから、本
法案の成立により、事実上、議決されたことと等しく、豪州酪農改革の姿が見え
始めた。

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