GM 作物の試験栽培で議論が白熱(フィリピン)


農民などが試験栽培をめぐり訴訟を提起

 フィリピンでは、遺伝子組み換え(GM)作物の試験栽培をめぐり、賛否の議
論が白熱している。

 ことの発端は、大手種子メーカーが、500平方メートルのほ場で、殺虫効果を
持つことで知られている米国産のGMトウモロコシの試験栽培を、99年12月に開
始したことにある。この試験栽培に対しては、既に28名の農民と5つの非政府組
織が、中止を求めて最高裁判所に提訴している。農民らは、@GMトウモロコシ
の安全性に疑問があること、A現在のフィリピンでは、GMトウモロコシを導入
してまで生産を増加させなければならないほど、国内への供給力が弱くないこと、
BGMトウモロコシの導入により生産過剰となった場合に、不利益を受ける可能
性があることを挙げ、GMトウモロコシの導入の必要性を否定している。さらに、
この試験がほ場のあるサントス市議会の許可を受けていないことを取り上げ、試
験そのものが合法的に進められていないとしている。


政府・議会関係者は試験栽培に肯定的

 アンガラ農業長官は、@農作物の収量や生産性を向上させる技術に目をつぶる
べきでないこと、A試験ほ場は500平方メートルの面積に限定されており、環境
への影響はほとんどないことなどを挙げ、この試験栽培に肯定的な立場をとって
いる。同長官は、GMトウモロコシは、バイオ工学に関する国家安全性委員会で、
1年以上前に試験開始の許可を得ており、試験そのものは合法的に進められたと
している。

 また、上院農業委員長も、この試験栽培には多くの専門家が関係していること
から、環境に対する危険性はすぐに発見されるだろうとし、この試験は奨励され
るべきものと述べている。さらに、同委員長は、米国などでは、既に商業ベース
でGM作物が生産されており、これらの国々はフィリピンよりも安全性に対する
基準がかなり厳しいことから、今回試験栽培される米国産GMトウモロコシの危
険性は低いとしている。


ほ場所在地では、当局が試験中止を指示

 一方、試験ほ場のあるサントス市は、試験を行っている企業に対し、栽培を中
止するよう指示している。同市は、中止しない場合、栽培試験が市議会の許可を
得ていないことから、違法行為として提訴するなどの強制手段に出る構えも見せ
ている。また、一部の環境保護団体は、現在の試験ほ場の設計では、風によって
花粉がほ場外へ運ばれる可能性があるなど、完全に制御された状態になっていな
いことを指摘している。

 アンガラ農業長官は、いずれも話し合いにより解決できる問題であるとしてお
り、今後、試験栽培の賛否をめぐる両者の動向が注目される。

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