USDA、新たなオーガニック基準案を発表(米国)


当初案発表から約2年を経ての見直し案提示

 米農務省(USDA)は3月7日、有機(オーガニック)食品の生産、表示、認証
等に関する新たな全国統一基準案を発表した。これは、97年12月に発表された当
初案に対して寄せられた約27万6千件ものパブリック・コメントや全国オーガニ
ック基準委員会(NOSB)からの勧告を踏まえて見直されたものである(当初案
の詳細については、本誌98年3月号「特別レポート」参照)。

 グリックマン農務長官は、記者発表の席上、「これは、世界中で最も包括的か
つ厳格なオーガニック基準であり、まさに米国の消費者やオーガニック農家が求
めていたものにほかならない」と述べている。


遺伝子組み換え食品の扱いなどの面で規制を強化

 当初案では、政治的配慮などもあって、特に、@遺伝子組み換え技術に由来す
る食品(原料も含む。以下同じ。)、A放射線照射が施された食品、B下水汚泥
を肥料に用いて生産された食品の扱いについての結論が先送りされていた。しか
し、USDAは今回、「(上記の)生産手法が、環境または人間の健康にとって受
け入れ難い危険性をもたらすとする科学的根拠は見いだせないものの、寄せられ
たコメントの大宗を占める拒否反応を考慮し、(上記食品についての)“オーガ
ニック”表示の適用を禁止する」としている。

 また、オーガニック農産物の生産・取扱基準に関しては、当初案通り、土地に
ついて、収穫前の3年間は、化学肥料・農薬等が投入されていないことなどを条
件としているが、生の家畜ふん尿の使用基準については、最終的な施肥から作物
の収穫までの合理的な期間の設定等、安全性確保のための科学的知見をさらに集
約していく必要があるとしている。

 一方、家畜に係る基準については、@オーガニックとして生産された飼料(ビ
タミンやミネラルなどの補助飼料を除く。)を100%給与しなければならない
(注:当初案では20%までの非オーガニック飼料の給与が認められていた。)、
A成長促進のためのホルモン剤に加えて、抗生物質についても全面的に使用して
はならない(注:当初案では、抗生物質についての例外規定が設けられていた。)、
B悪天候などによる一時的な場合を除き、恒常的な舎飼いや係留を行ってはなら
ず、屋外(特に、反すう家畜については放牧草地)へのアクセスが確保されてい
なければならない(注:当初案では、必要な場合は、自由な出入りが制限される
環境下に置くことができるとされていた。)といった、より厳格な制限が加えら
れている。


業界は賛否両論

 USDAによれば、オーガニック食品の小売販売額は、90年の約10億ドル(1,080
億円、1ドル=108円)から、99年には約60億ドル(6,480億円)にまで急速に拡大
しており、また、オーガニック農家の数も年間約12%の割合で増加し、現在は、
小規模層を中心として全米に約1万2千戸が存在するとみられる。しかしながら、
今回の見直し案は、オーガニックというニッチ(隙間)マーケットにエントリー
する者すべてにとっての追い風というわけでもなさそうだ。全米最大手のオーガ
ニック乳業会社であるホライズン・オーガニック社は、「91年以来厳格な基準を
実践してきた」と自負するとともに、牛乳パックのスペースを利用して、消費者
に「USDAの(当初)案には失望した」とのコメントを出すよう呼びかけるなど
の活動を行ってきており、早くも、この見直し案に対して歓迎の意を表明してい
る。一方、全国食品加工業者協会(NFPA)などからは、特に、遺伝子組み換え食
品や放射線照射の扱いに関し、「厳しすぎる」との懸念の声が上がっている。

 なお、今回の見直し案に対しても、90日間のパブリック・コメント期間が設け
られており、USDAは、年内にも最終規則を制定させたいとの意向である。

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