USDA、食肉取引情報の報告義務化規則案を発表(米国)


牛、豚、子羊の取引情報の報告をパッカーに義務付け

 米農務省(USDA)は3月17日、99年家畜強制報告法に基づき、食肉加工処理業
者(パッカー)などに対する取引情報の報告義務化に関する規則案を発表した。

 報告義務の対象となるパッカーは、過去5年間の年平均と畜頭数が、肉牛につ
いては12万5千頭、豚については10万頭、子羊については7万5千頭を超える者で
ある。また、同規則案では子羊肉の輸入について、過去5年間の年平均輸入量が
5千トンを超える輸入業者も対象とされている。

 これらの業者には、肉牛、豚、子羊、子羊の枝肉および部分肉の購入取引、ま
た、牛部分肉および子羊部分肉の販売取引について、価格、数量に関する詳細な
情報の報告義務が課せられる。例えば、肉牛購入の場合、タイプ別、国産および
輸入品別、価格決定方法別などの買入価格、国産および輸入品別などの購入頭数、
生体・枝肉重量、品質格付け、プレミアムまたは値引きなどの報告が求められる。
また、報告の遅延、虚偽の報告などに対しては、罰金その他のペナルティが科さ
れることとされている。

 さらに、報告回数については、豚の購入の場合1日3回、肉牛と子羊の購入およ
び牛部分肉の販売の場合は1日2回とすることなどが定められている。


当面、情報提供は全国レベルのデータに限定

 報告されたデータの提供について、USDAの担当部局である農業マーケティン
グ局(AMS)は、寄せられたコメントを参考に、より理解しやすい方法で正確に
提供できるよう検討するとしているが、当初は情報の機密性を考慮して、全国レ
ベルのデータだけを提供していくものとみられる。一方、AMSが大量のデータを
取り扱うことに関して、その対応を疑問視する声も聞かれるが、AMSはスタッフ
の雇用、新たなソフトウェアの開発、必要な機器の購入などで対処するとしてい
る。


生産者団体は、規則案を評価

 今回の規則案発表に対して、肉牛、肉豚生産者などの生産者団体は歓迎の意を
表している。

 規則案の根拠法である99年家畜強制報告法は、全国肉牛生産者・牛肉協会
(NCBA)や全国豚肉生産者協議会(NPPC)などの生産者団体の強力な支持の下、
2000年農業歳出法案の一部として昨年10月に成立したものである。

 同法が法制化された背景には、近年のと畜・加工部門の集中化や、インテグレ
ーションをはじめとする垂直化の進展といった市場構造の変化に伴って、取引方
法も変化していることから市場取引情報が不足し、適正な価格形成が阻害されて
いるとの生産者の懸念があった。USDAは、同省が現在提供している市場情報で
は、肉牛取引の35〜40%、豚取引の75%、子羊取引の40%がカバーされていない
とみている。こうしたことから、取引情報の透明化にかける生産者などの期待は
大きいものとなっている。NCBAでは、市場情報の充実は、必ずしも生産者の利
益増大につながるわけではないものの、市場動向をより的確に把握でき、生産者
の意思決定がより確実になるとコメントしている。

 なお、同規則案は30日間のコメント収集を経て、夏ごろには施行されるものと
みられる。

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