豪州の牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○高い肉牛・牛肉需要を反映して牛群の再構築に遅れ


と畜頭数増加により停滞する飼養頭数

 豪州農業資源経済局(ABARE)によると、2000年3月末現在の肉牛飼養頭数
(速報値)は、2,530万頭と前年度をわずかに下回り、94年とほぼ同水準となっ
ている。豪州では、これまで内外の市場における高い需要を背景に、生産、輸出
ともに拡大傾向にあった。今年度に入っても、豪ドル安で推移する為替相場など
の影響を受け好調となっている。需要に応えるためには必然的にと畜により飼養
頭数が減ることになり、肉牛飼養頭数の増加が見られない結果となっている。

◇図 肉牛総飼養頭数およびと畜頭数割合◇


課題とされる牛群の再構築

 このように短期的には内外からの需要に対応するための早急な牛肉生産が必要
とされている一方、長期的には牛群の再構築が課題とされている。飼養頭数に対
すると畜頭数の割合は、92年から96年にかけて減少しているもののそれ以降再び
増加していることから、短期的な生産に重点を置き、将来の生産に向けて十分に
備えることのできない状況にあることが分かる。また、これに伴い96/97年度以
降の枝肉生産量は、99/2000年度は頭打ちとなったものの、全体としてはわずか
ながらも増加傾向で推移している。


生体牛の輸出増も圧迫要因

 こうした中、と畜頭数の増加とは別に牛群の再構築を圧迫する要因として考え
られるのが、生体牛の輸出である。99/2000年度の生体牛輸出頭数は85万1千頭
と、飼養頭数に占める割合は少ないものの、前年比16.7%増と97年のアジア通貨
危機以前の水準に回復してきている。これは従前からの輸出先である、インドネ
シア向けが回復したのに加え中東向けも伸びてきているためであり、今後は安定
した輸出先に加え、さらなる市場拡大が予想される。

◇図 生体牛輸出頭数の推移◇


ABAREは牛群の再構築の進展を予測

 ABAREでは、2000/01年度の肉牛飼養頭数は増加するものの、と畜頭数は減
少すると予測している。これは牛群の再構築によるもので、今後3年間はこの傾
向が続くと見ている。しかしこれまでも、牛群の再構築が必要とされながらも、
実際には行われてこなかった。これは肉牛・牛肉ともに高値の中で、短期的な需
要に応えるための生産を行ったためで、今後もこうした供給スタンスを継続する
限り、将来安定的に肉牛・牛肉を供給するための条件となる牛群の再構築の実現
は難しいとみられる。豪州の肉牛・牛肉産業が、長期的な視点からどのように需
給バランスをとるかが注目される。

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