◇絵でみる需給動向◇
EU統計局は、2000年第一四半期(1月〜3月)までのEU15ヵ国における成牛と畜 頭数を発表した。これによると、成牛と畜頭数は549万6千頭と前年同期比0.1%の 増加になった。牛海綿状脳症(BSE)問題に端を発した牛肉需要の低迷などさま ざまな要因により、と畜頭数はここ数年間減少傾向で推移してきたが、ここに来 て、わずかながらも増加の兆しを見せつつある。この背景には、域内各国でのBS Eに対する積極的な取り組みや、安定的な経済成長がもたらす牛肉需要の回復など がある。今後、予想されると畜動向については、需要が引き続き回復傾向との見 方が出ていることから、わずかながらも増加傾向で推移するものとみられている。 EUの成牛と畜頭数(2000年1〜6月) 資料:EU統計局 注:(1)は3月(2)は4月、(3)は5月までの実績
と畜動向を国別に見ると、EUの主要牛肉生産国であるフランスでは、BSEに対 する関心の高まりから国産志向が強まり、結果的にと畜の伸びにつながっている。 また、と畜については去勢牛や老廃牛を中心とした伸びが目立っている。これは、 雌牛の保留傾向が強まっているためで、域内の牛肉需給が回復に向かう中で、将 来的な生産基盤の確保を図るという動きの表れともいえる。反対にドイツやイギ リスでは、と畜頭数の増加は見られたものの、雌牛を中心としたと畜が伸びてい る。 一方、ここ数年、主要な肉牛生産国としての地位を確立しつつあるアイルラン ドでは、と畜頭数が減少に転じている。これは、実質的にアイルランド向けに行 われてきたEUの季節是正奨励金が削減されたことと併せて、生体牛輸出が大幅に 増加した結果、飼養頭数が減少傾向に転じ、国内での牛肉生産を減少させている ことが要因として挙げられる。
このような中、EU域内の牛肉価格は上昇基調で推移している。今年に入り、主 要牛肉生産国の価格はいずれも堅調に推移しており、牛肉に対する需要の着実な 回復が読みとれる。最近の市場動向を見てみると、夏場の需要期を迎えた7〜8月 の価格水準は、域内の牛肉消費が好調であったため前年同期と比べかなり堅調な 水準で推移した。9月に入り牛肉価格はやや低下傾向を示しつつあるものの、と 畜頭数の大幅な伸びが見込まれない中で、年末の休暇シーズンに向けた需要が見 込まれていることから、牛肉価格は引き続き堅調な推移が予想される。 ◇図 主要牛肉生産国の価格動向◇
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