米国の牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○好調なメキシコとの牛・牛肉貿易


牛肉輸出は1〜7月で18.5%増

 米農務省(USDA)によると、日本に次ぐ輸出先であるメキシコ向け牛肉輸出
量(枝肉重量ベース)は、原油価格の高騰などに伴う同国の好景気から、前年同
期比18.5%増の13万4千トンと高い伸びを示した。メキシコ向け牛肉輸出につい
ては、94年1月の北米自由貿易協定(NAFTA)発効に伴う関税の撤廃により、94
年には前年比85.8%増の10万1千トンに達した。94年末のペソ切り下げを契機と
した経済危機により、95年は前年の約4割の水準にとどまったものの、その後は
経済回復などによる需要の拡大に伴って順調に増加し、99年には前年比11.3%増
の21万1千トンと史上最高を更新している。

◇図 メキシコへの牛肉輸出◇


生体牛輸入は経済危機以前の水準に回復

 一方、メキシコからの生体牛輸入は、今年1〜7月で64万5千頭と前年同期を38
.6%上回った。メキシコからの生体牛輸入は、テキサス州などのフィードロット
向け肥育素牛が大部分となっており、その多寡は米国への供給基地である北部地
域の天候や農家の経営状態に加え、米国南西部の肉牛価格に大きく左右される。
こうした背景から、95年は、メキシコ北部で経済危機により生産者の経営状態が
悪化し、干ばつにも見舞われたため、165万3千頭と過去最高を記録した一方、96
年から98年にかけては、メキシコ国内での牛群再構築の進展や、米国内価格の低
迷などから輸入は大きく減少した。しかし、99年は、米国内価格の高騰などによ
り、前年比33.2%増の96万頭とほぼ経済危機以前の水準まで回復した。今年に入
ってからは、米国内価格が依然高水準にあることなどにより、前年を上回るペー
スの輸入となっている。

◇図 メキシコからの生体牛輸入◇


今後も明るい見通し

 メキシコ政府は今年4月以降、輸入が急増する米国産牛肉について、これをダ
ンピングと裁定し、一部の米国産輸入牛肉にダンピング防止税を賦課している。
しかし、経済成長や人口増加に伴って拡大する需要に、国内生産が追いつかない
こと、米国産穀物肥育牛肉への需要が極めて高いうえ、これら高品質のものには
ダンピング防止税の適用が除外されていることなどから、このことによる影響は
それほど大きくなく、メキシコへの牛肉輸出は今後も増加傾向が見込まれる。ま
た、生体牛輸入についても、堅調な米国内価格を反映して、今後1〜2年は高水準
で推移するとみられる。

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