◇絵でみる需給動向◇
米農務省(USDA)によると、2000年1〜7月におけるロシア向けブロイラー輸 出量(可食処理ベース)は、前年同期比339%の33万7千トンとなった。ロシアは、 94年以降最大の仕向け先となり、最盛期の97年には米国からの輸出量の44%のシ ェアを誇ったものの、98年8月の経済危機に伴うルーブル切り下げを契機に、同 国への輸出量は激減し、99年にはシェア1位の座を香港に明け渡した。しかし、 今年に入ってからは、99年末に決定した援助輸出(2万6千トン)が年初に船積み されたことなどから、1〜7月では3倍を超える大幅な伸びとなった。また、米国 産ブロイラーの多くがロシアへ陸送されるバルト海諸国(ラトビアおよびエスト ニア)向け輸出量は、ロシア当局が今年4月、関税逃れの不正取引を一掃する目 的から、自国と陸続きでない輸出国に対して指定の港以外での荷下ろしを暫定的 に禁止したことから5月以降減少し、1〜7月では前年同期の約6割にとどまった。 しかし、旧ソ連全体では、3割程度上回っている。 ◇図 ロシアおよびバルト海諸国向けブロイラー輸出◇
このような輸出増は、ロシア国内での需要の増加によるところが大きい。ロシ アでは、原油価格の高騰やインフレ率の低下などを反映して経済が好調で、消費 者の購買意欲が回復している。また、米国産ブロイラーの輸出価格が国際市場で の競争激化により低下したうえ、EU産食肉の輸出補助金が引き下げられたことか ら、他の食肉に対する米国産ブロイラー(冷凍もも肉)の価格優位性が増したこ とも、需要の増加に貢献している。7月1日には、鶏肉製品に対する付加価値税が 20%から10%へ引き下げられ、鶏肉の優位性はさらに高まった。 ◇図 ロシアの食肉卸売価格(2000年)◇
ロシアでは8月15日以降、鶏肉製品の関税率が30%(またはkg当たり0.3ユーロ (約29円:1ユーロ=97円)のいずれか高い方)から25%(またはkg当たり0.2ユ ーロ(約19円)のいずれか高い方)へ引き下げられた。バルト海諸国経由の陸送 規制も、2000年末には解除されると伝えられている。さらに、ロシア国内のブロ イラー生産は、飼料価格の高騰や非効率な飼養管理などにより、不振を続けると みられる。こうしたことから、USDAでは、ロシア向け輸出は2001年には経済危 機以前の水準まで回復するとみている。
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