◇絵でみる需給動向◇
ドイツ市場価格情報センター(ZMP)が発表した域内における肉豚供給頭数予 測によると、2000/01年度(2000年7月〜2001年6月)のEU全体での供給頭数は2 億366万頭と、前年度に比べ頭数にして381万頭、率にして2%の減少が予測され ている。EUの肉豚供給数量は、98年から99年にかけての記録的な価格低迷により、 養豚農家の増頭意欲が大幅に減退し、その後も全般的に飼養頭数の回復が遅れて おり、98/99年度を境に減少傾向で推移している。また、農家戸数の減少の中で 1戸当たりの飼養規模は増えつつあるものの、養豚をめぐっては、環境規制の問 題などさまざまな要因が飼養動向に影響を与えている。 ◇図 EUにおける肉豚供給頭数の推移◇
EU域内における2000/01年度の肉豚供給頭数について国別の動向を見ると、E U最大の豚肉輸出国であるデンマークは、好調な輸出を背景とする飼養規模拡大 化の進展などにより15ヵ国中唯一、3%程度の増加を予測している。また、生産、 消費とも拡大が伝えられるイタリア、スペインでも増加を見込んでいる。 一方、これら3ヵ国以外の加盟国についてはいずれも減少との予測である。中 でもEU最大の飼養頭数を誇るドイツでは、農家戸数の減少や飼養頭数回復の遅れ が生産に大きな影響を与えるとして、前年度を3%程度下回る115万頭の減少を予 測している。また、スウェーデンや14年ぶりの豚コレラ発生により養豚農家への 影響が懸念されているイギリス、さらに、環境規制の強化により飼養頭数の削減 が図られているオランダなどについても、かなりの程度での減少を予測している。 ◇図 肉豚の国別供給予測と増減率(2000/01年度)◇
このように、肉豚供給頭数の動向を見ると、それぞれの国々における養豚の現 状がうかがえる。増加が予測されるデンマークでは、規模拡大による生産性の向 上を背景に養豚は農業の基幹産業として確立し、域内最大の豚肉輸出国としての 地位を築いている。また、スペインでは、豚肉に対する消費の拡大もさることな がら、削減政策を推進するオランダなど他国からの養豚の新規移入が目立ってい る。これらの状況は、EUという大きな枠組みの中で、各国の状況に合わせた得意 品目への特化、すなわち、EU全体として需給バランスを図るという意志の表れと もいえる。EU全体の中で、新たな豚肉生産体制が確立されつつあるのかもしれな い。
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