EU、豚に関する動物愛護規則の強化を検討


EU委員会は規則改正の意向

 EU委員会のバーン委員(公衆衛生/消費者保護担当)は9月19日、豚に関する
動物愛護をさらに推し進めるため、現行規則を改正する意向を明らかにした。豚
の飼養に際しての保護を目的とした規則は、91年11月に理事会指令(91/630/
EEC)として定められているが、動物愛護団体などから、同指令の内容が十分な
ものではないとして、EU委員会やEU議会に対し、規則強化についての働きかけが
続けられていた。

 また、EUの家畜衛生および動物愛護に関する科学委員会は97年9月、動物愛護
の面から、豚の飼育環境のより一層の改善が必要であるとの勧告を採択していた。

 今回のバーン委員の発言は、こうした状況を受けてのもので、今後さらなる飼
養密度の緩和や、繁殖雌豚の群飼育などのほか、加盟国での実状などを踏まえ、
正式提案に向けて検討が進められていくものとみられる。


不十分とされる現行規則

 91年11月に定められた理事会指令(91/630/EEC)は、豚の過密飼育や断尾等が
日常化している実態を受けて、EU議会がEU委員会などに対し、豚の飼養実態の
改善措置を要請したことがきっかけとなったものである。

 この指令は、EU内で飼養されるすべての豚(一部小規模農家を除く)を対象と
し、生産者が豚を飼養する際に無用なストレスや苦痛を与えないよう保護するこ
とを目的に、畜舎や豚の飼養管理について基準を定めている。現行指令の概要は、
以下の通りである。

@体重別に豚1頭当たりの最低床面積を規定し、飼育密度を制限

(例)85kg超〜100kg以下  0.65m2
   100kg超        1.00m2

A繁殖雌豚のつなぎ飼い用施設の新規または設備更新による設置を禁止

B4週齢以上の子豚についての去勢は、獣医師または資格を有する者が麻酔をか
 けた上で実施

C慣習的な尾および歯の切除を禁止、ただし、歯の切除が必要とみられる場合に
 は、7日齢以内に実施

D最低3週齢まで、ほ乳期間を確保等


注目される動物愛護の推進維持

 EUでは、消費者の動物愛護に対する高い関心を背景に、豚のみならず他の畜種
も含め、動物愛護の観点から生産段階の農場での飼養管理や輸送、と畜方法にま
で幅広く規制が行われ、徐々にその内容が強化されている。ただし、域外諸国と
比較して突出した動物愛護の推進は、EU産畜産物の国際競争力を弱める側面を持
つため、EUは、世界貿易機関(WTO)交渉などの場で動物愛護の問題を取り上げ
たいとの意向を持っている。しかし現実的には、EUの規制に賛同できる国内環境
を持つ国は多くないとの見方もあり、今後、EUの施策が国際基準として域外諸国
の同意を得られるかが注目される。

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