EU、米国産ホルモンフリー牛肉の全量検査を撤廃


99年4月から全量検査を実施

 EU委員会は9月27日、常設獣医委員会(SVC)での採択を受けて、米国から輸
入される食肉を対象に実施していたホルモン残留に関する全量検査の撤廃を決定
した。

 EUでは、天然型か合成型かを問わず、成長促進剤としてのホルモンの使用を禁
止しており、成長ホルモンを投与した肉牛から生産された牛肉の輸入も89年から
禁止されている。 

 しかし、99年4月、成長ホルモンを投与していないとして輸入された米国産牛
肉および肝臓についてサンプル検査を行ったところ、その12%に成長ホルモン
(トレンボロン、ゼラノール、メレンゲステロール)の残留が認められた。この
ため、米国側のチェック体制が問題となり、それ以降、全量検査が行われてきた。


SVCは米国の輸出検査体制をEU基準に適合と認定

 EU委員会は米国に対し、再発防止のための十分な改善措置を講じるよう強く改
善を迫った結果、米国も第3者機関による認証システムを導入するなど、対EU輸
出向けホルモン非投与肉牛プログラムの改善に応じた。2000年3月には、米国の
ホルモン非投与牛肉に関する輸出検査体制がSVCによりEU基準に沿ったものであ
ると認められた。

 今回の決定により、EUに輸入される米国産の食肉は、他の域外諸国から輸入さ
れるものと同様に、20%の抽出検査が実施されることとなる。なお、これまで実
施された米国産食肉に対する全量検査では、ホルモンの残留は認められていない。


EUは制裁措置緩和に向けた交渉開始の契機と期待

 EUのホルモン牛肉の輸入禁止措置に関しては、世界貿易機関(WTO)により、
衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)に違反しているとの裁定が出
されている。しかし、EUは健康を害する恐れがあるとして、その後も輸入禁止
を継続しており、これに対し、米国およびカナダは、それぞれ99年7月29日およ
び8月1日から、EU産食肉・食肉製品などに対し100%の報復関税を適用するとい
う制裁措置を発動した。

 しかし、EUが制裁措置の発動後も、依然として輸入禁止措置を撤回する動き
を見せないため、米国は2000年5月、報復対象品目の入れ替え方式の導入を準備
するなど、昨年以降、EU・米国間のホルモン牛肉をめぐる貿易紛争はエスカレ
ートしている。

 今回の米国産食肉のホルモン残留に関する全量検査の撤廃により、米国産ホ
ルモン非投与牛肉のEUへのアクセスが改善に向かうとみられる。EUでは、米国
などが実施しているホルモン牛肉に対するEUへの制裁措置の緩和に向けて、交
渉開始の契機になるものと期待する向きもある。

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