口蹄疫問題に対するメルコスル諸国の動向


南米で広がる口蹄疫をめぐる問題

 南米では、8月初旬のアルゼンチンをはじめブラジルなどで口蹄疫をめぐる問
題が発生している。こうした一連の口蹄疫問題への対応を検討するため、南米南
部共同市場(メルコスル)の口蹄疫問題専門家会合が9月12日、ウルグアイのモ
ンテビデオで開催された。この会議には獣医師など各国専門家が参集し、パンア
メリカン口蹄疫センターの調整の下、各国が協同して問題解決に当たることなど
が合意された。口蹄疫問題に対するメルコスル諸国の動向は次の通りとなってい
る。

メルコスール諸国の口蹄疫に関するOIEによる衛生ステータス
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アルゼンチンでは問題収束の方向へ

 アルゼンチンでは8月2日、パラグアイとの国境に近いアルゼンチン北部フォル
モサ州で不法輸入された牛から口蹄疫の抗体の陽性反応が確認されことを発端と
して口蹄疫問題が発生した。

 今年6月1日から8月5日までにフォルモサ州から出荷された牛の血清検査がほぼ
終了し、352農場などからの16,679検体の検査結果はすべて陰性と判明した。こ
れまで15頭の口蹄疫抗体陽性牛が確認されたが、その後新たな抗体陽性牛は見つ
かっておらず今回の口蹄疫騒ぎも収束に向かっている。こうした状況を踏まえ、
問題発生後1ヵ月以上とられていた家畜の移動禁止措置が9月18日以降緩和された。

 9月中旬にEUの衛生調査団が派遣され、フォルモサ州ほか3州の現地調査が実施
された。また、9月下旬には2国間の衛生協定に向けて米国、カナダ、メキシコの
北米自由貿易協定(NAFTA)3国合同調査団をはじめ、国際獣疫事務局(OIE)調
査団、中国からのミッションが続々と派遣され、現地調査が実施された。

 なお、OIEは現地調査の結果などから、9月28日にアルゼンチン当局に対し、ワ
クチン不接種清浄国の衛生ステータスに変更がない旨を通知した。これにより米
国、カナダへの牛肉輸出の解禁時期も早まるものと見られている。


パラグアイでは数百万頭の牛にワクチン接種予定

 アルゼンチンの口蹄疫問題で、感染源はパラグアイから不法輸入された牛であ
ると指摘された。

 9月2日、ブラジルのポルトアレグレで開催されたメルコスル農相会議で、口蹄
疫ワクチン接種中止を表明している中での接種の事実を隠しきれなかった同国は、
口蹄疫に感染した疑いのある牛の殺処分を開始し、また数百万頭の牛にワクチン
接種を予定している。


ブラジルでは問題収束の兆しなく厳戒体制を継続

 ブラジルでは8月下旬、ウルグアイと国境を接するリオグランデドスル州のジ
ョイア市の4農場(件)で乳牛を中心に28頭の牛がO型による口蹄疫患畜と診断
された。

 口蹄疫の発生は散発的だが、現時点の発生件数はジョイア市の18件を含む21件
に増え、21農場を含む33農場で牛2,800頭、豚900頭、羊など200頭が殺処分され
た。今後も殺処分の頭数は増加する見込みであり、口蹄疫問題が収束の兆しが見
えていない。今年5月以降口蹄疫ワクチン接種を中止した同州は、現時点でワク
チン接種を再開していない。同州と州境を接するサンタカタリナ州やその北部の
パラナ州は、厳重な警戒態勢をとっている。今のところ口蹄疫の発生があるのは
リオグランデドスル州のみである。ブラジルは米農務省の衛生調査ミッションの
派遣を要請中である。


ウルグアイでは国境警備など厳重な防疫体制

 メキシコは9月初旬、ウルグアイに対し牛肉の輸入禁止を通知した。この通知
に不服のウルグアイは、NAFTA衛生調査団の派遣を要請し、9月下旬に米国とメ
キシコのミッションが現地入りして調査を実施した。国境の防疫管理体制の視察
などを含むこの調査は滞りなく終了し、ほどなくメキシコ向け牛肉輸出は再開さ
れる見込みとなっている。同国での口蹄疫の発生はないが、隣国の口蹄疫発生で、
厳重な国境警備を実施するなど幾重もの防疫体制を敷いている。

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