中国、WTOへの加盟は年越しか


中国へのNTR恒久化法案が米上院でも可決

 9月19日、米上院本会議は、中国の世界貿易機関(WTO)加盟に必要とされる、
同国への通常貿易関係(NTR:最恵国待遇)を恒久的に付与するための法案を、
83対15の賛成多数で可決した。同法案は5月24日、すでに下院本会議で可決され
ており、10月10日、クリントン大統領の署名により、正式に法律として発効した。

 米国は過去20年間、対中貿易待遇の条件を毎年見直してきたが、法案の成立に
より、他国に適用している低関税など有利な条件を、中国に対しても恒久的に認
めることになる。また、中国も農業や自動車、情報通信、金融・保険など幅広い
分野で門戸を開くことが、既に2国間協議で決まっている。

 同法案は当初、5月下旬に下院で可決されたのち、6月上旬には上院を通過する
ものとみられていた。しかし、6月7日には上院財政委員会で法案の受理が決定さ
れたものの、人権問題や、中国からの輸入増加と米国企業の中国進出により、雇
用が奪われるとする労働界からの声などを受け、共和党が修正案を提出したこと
などから審議がこう着した。この修正案はのちに取り下げられたが、その後も諸
般の事情から審議のスケジュールがずれ込んだうえ、大幅に遅れていた予算審議
を最優先するなどの議会の方針もあり、結局、夏期休会明けの9月まで採決が延
びた形となった。


中国は基本的に法案可決を歓迎

 米上院でNTR法案が可決されたことについて、中国の対外貿易経済合作部は9月
20日、米中両国の経済貿易協力関係の安定と両国間の関係発展に役立つだけでな
く、両国民の基本的利益や期待に沿うものであるとの談話を発表し、歓迎の意を
示した。

 また、同じく外交部も、貿易上は他国を差別しないというWTOの原則に符合す
るものであり、長期にわたる安定的な両国の経済貿易関係を整えるものとして、
両国民の基本的利益にかなうとともに、2国間関係の健全な発展にとって極めて
重要であるとコメントしている。

 しかし、対外貿易経済合作部および外交部とも、同法案が、中国の人権擁護状
況を監視する常設委員会を米議会内に設置することや、中国と台湾が同時にWTO
へ加盟することを推進するなどの内容を含んでいることなどについては、内政干
渉であるなどとして反発を強めている。


WTO加盟への2国間交渉は大詰めに

 中国とスイスは9月26日、中国のWTO加盟について2国間で合意に達した。両国
間では、スイスの保険会社に中国が発給する事業免許の数や、高級腕時計の関税
率引き下げなどをめぐって交渉が難航していたが、このほど双方が歩み寄り、今
回の合意に至ったものである。これにより中国は、2国間の市場参入交渉を希望
したWTO加盟国のうち、36ヵ国・地域と合意に達したことになり、2国間合意に
達していないのは、砂糖の貿易をめぐって駆け引きが続いているメキシコを残す
だけとなった。

 なお、中国の多維新聞によると、このほかに中国は中南米のパナマ、ボリビア、
ホンジュラス、ニカラグアおよびドミニカの5ヵ国とは、2国間交渉を今年7月に
なってようやく始めており、まだ合意に達していないとの指摘もあるという。た
だし、このうちボリビアを除く4ヵ国が台湾と国交関係を持つことなども含め、
中国側はWTO加盟に当たり、これら5ヵ国との交渉合意の必要性を認めないだろ
うとの声もある。


中国の年内加盟はかなり微妙な情勢

 一方、ジュネーブで行われていたWTO中国加盟作業部会は9月28日、加盟条件
をめぐる調整作業の決着を持ち越して閉会した。

 同作業部会では、9月13日から2週間、中国が米国やEU、日本などとの一連の2
国間交渉で合意した事項を多国間に広げ、WTOへの加盟条件や関税率引き下げの
経過期間などを盛り込んだ加盟議定書のとりまとめを目指して開催された。

 しかし、この多国間交渉では、各種の基準・認証や司法審査、知的財産権の保
護及び補助金に関することなど、中国の法制改革が必要とされる事項などについ
て、「発展途上国扱いでのWTO加盟」や「WTO協定を超える義務の拒否」を主張
する中国と関係各国との間に対立が残り、合意には至らなかった。

 作業部会のジラード議長(スイス)は、次回の加盟交渉について、10月下旬か
ら11月初旬との希望を示したものの、それに先立って関係諸国が政治判断を下す
必要があるとも述べ、場合によっては、従来の2国間交渉をめぐる実質的な「再
交渉」が必要になる可能性も示唆した。

 中国のWTO加盟については、2国間交渉と多国間交渉の双方をとりまとめ、WT
O一般理事会における承認を受けたのち、中国が国内批准手続きを完了し、WTO
に正式な加盟申請をする必要がある。WTOの手続き上、加盟が実現するのは申請
から30日後とされる。このため、今回の多国間交渉が合意に達しなかったことで、
中国のWTOへの年内加盟は、日程的にかなり微妙な情勢となっている。

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