フィリピン、欧州産豚肉の輸入を規制


欧州での豚コレラ発生が引き金に

 フィリピン政府は、豚コレラの発生が相次ぐ欧州産豚肉の輸入を規制する動き
に出た。

 同国のアンガラ農業長官は8月14日、国際獣疫事務局(OIE)が、イギリスにお
ける豚コレラの発生を発表したことを受け、英国産の生体豚、豚肉およびその加
工品を一時的に輸入禁止とする省令を公布した。また、併せて、フィリピンへの
輸送途中にある豚肉の差し止め措置も行っている。

 さらに、政府は、7月に豚コレラの発生が確認されたドイツ産豚肉およびその
加工品の輸入制限を行うことも発表した。これにより、ドイツ産豚肉に関しては、
豚コレラ非汚染地域からの輸入のみが認められることとなった。この省令では、
ドイツで生産されたフィリピン向けの豚肉やその加工品は、@と畜検査で豚コレ
ラに感染していないと判断されたものであること、A豚コレラの非汚染地域内で
生産されたものであること、B非汚染地域内でと畜・加工されたものであること、
C豚コレラワクチン非接種のものであることなどが規定されている。


政府は豚肉需給に危機感抱くも、市況は安定

 フィリピンは今年に入って、552トンのイギリス産豚肉を輸入しており、それ
らは主にソーセージなど加工品の原料として使用されている。97年におけるイギ
リスからの豚肉輸入は皆無であったが、98年には25トンが輸入されており、近年
増加の傾向にある。一方、ドイツ産豚肉の輸入は、97年には70トンであったが、
98年には25トンと大幅に減少した。

 先に農業省畜産局は、昨年フィリピンが輸入した4万4千トンの食肉のうち、イ
ギリス産豚肉は1割以下であるため、同国産豚肉の輸入禁止が直ちに国内の豚肉
需給に深刻な影響を与えることはないとコメントしていたが、ドイツでも豚コレ
ラの発生が確認されたことから、危機感を強めているようだ。

 フィリピンにおける豚肉市況は、このところおおむね落ち着いており、農業省
畜産局によると、人口が集中するルソン島北部における9月上旬の豚肉卸売価格
は、高級部位で1kg当たり95〜110ペソ(約238〜276円:1ペソ=2.51円)、その他
の部位で70ペソ(約176円)となっており、1ヵ月前からほとんど変動はないとい
う。農家販売価格についても、58〜60ペソ(146〜151円)の水準を維持している。


最近の政策に不満の養豚業界も規制を評価

 今年7月、フィリピン養豚協会と全国養豚協会が、無税による飼料用トウモロ
コシの輸入を求めて訴訟を起こし敗訴するという、養豚業界に陰を落とす出来事
が起こっている。両協会の提訴は、同国が押し進める農水産業近代化計画の一環
として公布された、「あらゆる農業資材は無税で輸入できる」という内容の省令
を根拠としたものであったが、国内のトウモロコシ農家保護という観点から却下
された。このように、最近の政策に不満を抱いていた養豚業界も、今回の規制に
ついては、一定の評価を与えているようである。

 政府は最近、豚の品種改良や疾病対策を念頭においた養豚農家の登録管理に動
き出すなど、養豚業強化の方針を打ち出している。その矢先の欧州産豚肉の輸入
規制措置は、同国の豚肉需給とも相まって、今後の養豚政策にも少なからぬ影響
を与えるものと思われる。

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