畜産物の自主表示に関する新たな動き(米国)


表示への関心示す2事例

 食品の表示は、消費者の適切な商品選択に資するための情報提供という役割の
ほか、他の商品との差別化を図るための販売戦略上の手段として用いられるケー
スもある。これらを明確に区分するには困難な面があるものの、表示の方法いか
んによっては、消費者の購買行動、さらには生産・供給サイドの対応にも影響が
及ぶこととなる。

 こうした食品の表示が米国の関係者の間でも重要視されていることを示す事例
として、最近における畜産物の表示に関する新たな2つの動きについて紹介する。


業界が国産牛肉の自主表示制度化を要請

 1つ目は、国産牛肉に対する自主表示の制度化を求める関係団体の動きである。

 全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)やアメリカ食肉協会(AMI)などの生産・
加工・流通の関係4団体は先ごろ、小売業者等の自主参加を前提とした、米国産
牛肉を「牛肉:メイドインUSA」(Beef: Made in the USA)と表示することを可
能にする認証プログラムの創設を求めた請願書を米農務省(USDA)に対して提
出した。

 これは、かつて食肉加工業界等の反発により原産国表示の義務化を断念せざる
を得なかったNCBAが、自主表示という手法に切り替え、これら業界の賛成を取
り付けて行ったものであるとみられる。

 請願書によると、対象となる牛肉は、米国内で最低100日間育成・肥育された
後、他国を経由することなく国内でと畜された肉牛由来のものに限定され、また、
このプログラムに参加する生産者、パッカー、小売店等における個体識別や記録
などに基づく書面による認証システムが、USDAによって運営されることなどが
挙げられている。

 この請願に先立ち、USDAは、輸入された牛・羊枝肉に対する格付けの実施を
全面的に廃止する意向を正式に表明しており、近い将来、店頭からは、「USDA・
チョイス」といった表示がなされた輸入枝肉由来の牛肉が姿を消すことになる。
今回のNCBAの動きからは、枝肉だけでなく、近隣諸国からのと場直行牛の輸入
に対しても目張りをすることにより、消費者に対する米国産牛肉の威信を高めよ
うとする並々ならぬ意気込みがうかがわれ、今後のUSDAの反応が注目される。


動物愛護ブランド表示制度が創設

 もう1つは、最近、米国動物愛護協会(AHA:American Humane Association)
による畜産物に対する動物愛護ブランドの表示制度が創設されたというものであ
る。

 具体的には、USDAの協力の下、AHAが設立した非営利組織が、苦痛を与えな
い方法で飼養された家畜由来の畜産物に対して、「Free Farmed(自由に飼われ
たもの)」という表示が行われることを認証するという任意制度である。

 動物愛護に対する関心は、米国でも根強いものがあるが、家畜については、E
Uなどと比べると、まだ顕著な取り組みがなされているとは言い難い。しかし、
年内の制定が予定されているUSDAのオーガニック食品に関する基準案では、家
畜の屋外へのアクセスの確保が規定されており、また、8月には、大手ハンバー
ガー・チェーンのマクドナルド社が、生産者に対して、ケージ面積の拡大といっ
た採卵鶏の飼養環境の改善を求めている旨を明らかにしたのも記憶に新しい。

 こうした流れもある中で、今回の動物愛護ブランドの表示制度が、生産者や加
工業者などにおける取り組みをどこまで定着・拡大させるのか興味深いところで
あるが、最終的には、このような新しい商品に対して、消費者が高いプレミアム
を払うだけの価値を見いだせるか否かにもよるものと思われる。

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