投票結果が待たれる米国の豚肉チェックオフ制度


投票後も緊迫した情勢

 9月19日から3日間にわたり、豚肉のチェックオフ制度の存廃を問うための全体
投票(レファレンダム)が、全米で実施された。

 投票資格を有する者は、不在者投票の受け付けが始まった8月18日からさかの
ぼる過去1年以内に、米国内で豚を飼養・販売した者および豚または豚肉を輸入
した者である。

 今回の投票をめぐっては、賛否を分かつ関係者の間で、手続き上の問題などに
関する不満が噴出し、投票後に及んでも、緊迫した情勢が続いているとみられる
(これまでの経緯については、本誌2000年6月号「トピックス」参照)。


GAOが投票決定過程の問題点を指摘

 1つは、米農務省(USDA)による投票実施の決定過程の正当性に関する問題が
挙げられる。チェックオフ制度の実施機関で、その存続を支持する全国豚肉生産
者協議会(NPPC)は、本年2月に投票の実施が発表された際、法律上、全体投票
の実施には、生産者や輸入業者の15%以上の署名が必要であるのに対し、集めら
れた約1万9千件の署名が有効なものであったかをUSDAが明確にしないまま、決
定に踏み切ったとの不満を表明した。これを受けた議会の要請により、米会計検
査院(GAO)においては、USDAの決定の妥当性について審査が行われ、投票日
を過ぎた9月28日、その報告書が公表された。

 報告書は、署名に関する要件が満たされていたかどうかは明確ではないとしな
がらも、グリックマン米農務長官には、今回の投票の実施を決定する権限がある
とし、USDAの決定そのものについては否定していない。ただし、署名の有効性
を判定すべき同省農業マーケティング局(AMS)が、最終的にこれを行わなかっ
たとして、その判定プロセスを強化するよう勧告している。また、投票に係る経
費の負担に関しても、法律に定められているように、USDAの予算ではなく、チ
ェックオフ資金によって賄われる必要があると指摘するなど、含みを持たせた内
容となっている。


NPPCは廃止派への反論に躍起

 一方、投票日を前に、制度の廃止を求める家族経営を中心とする農業グルー
プからは、チェックオフ資金が大規模企業経営やパッカー等を利するために用
いられ、また、NPPCが、投票結果を有利に運ぶため、不当な工作をしていると
いった批判がなされていた。これに対して、NPPCは、反対派の主張は絵空事で
あるとして全面的に否定するとともに、チェックオフ資金によって米国産豚肉
の認知度が高まった結果、米国の豚肉輸出量は、制度開始後間もない10年前と
比べると3倍近くまで拡大し、農家所得の増加にも大きく貢献しているとし、
チェックオフ制度のメリットを訴えかけていた。さらに、農家などに対する
「VOTE YES(制度の存続にはイエスと投票しよう)」と表した葉書の送付など
のキャンペーン費用についても、チェックオフ資金にはよらない独自財源で賄
われた正当な活動であるとも反論している。

 これまでのところ、投票率なども含め、状況は明らかにされていないが、有
資格者の確認等に時間を要することから、USDAによる投票結果の発表は、年
末ごろになるとみられている。

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