米国の牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○低下が続く肥育牛価格


8月は1年7ヵ月ぶりの前年割れ

 米農務省(USDA)によると、2000年8月の肥育牛価格(ネブラスカ州の相対取
引価格、去勢、1,100〜1,300ポンド)は、前年同月比0.4%安の65ドル/100ポン
ド(156円/kg:1ドル=109円)となった。肥育牛価格は、高級牛肉を中心に内
外からの需要が極めて旺盛なことから、99年2月以降一貫して前年を上回って推
移し、今年4月には前年同月比12.8%高の73.5ドル/100ポンド(177円/kg)と、
94年4月以来の最高値をつけた。しかし、その後は下降の一途をたどり、8月には
1年7ヵ月ぶりの前年割れとなった。(上図参照)


高級牛肉の供給増が低下の要因

 肥育牛価格の低下は、供給が増加して高級牛肉の需要を満たしたことに起因す
る。肥育業者の多くは、トウモロコシの豊作により安価な穀物飼料が入手できた
こともあり、大量の肥育素牛をフィードロットに導入して長期間肥育し、チョイ
ス級牛肉となる大型肥育牛を大量に出荷したとみられる。こうした肥育期間の長
期化は、1頭当たり枝肉重量が5月以降大幅に増加し、8月には前年同月比1.8%増
の341kgと過去最高を記録したことからもうかがえる。このような高級牛肉の供
給増に伴い、春以降高騰していたチョイス級牛肉の卸売価格は7月に入って急落
し、8月のセレクト級との価格差は4.6ドル/100ポンド(111円/kg)と、5月の
13.7ドル/100ポンド(329円/kg)から急速に縮小した。


年平均では60ドル台後半となるか

 今後の見通しについて、USDAは、2000年平均では68〜70ドル/100ポンド(1
63〜168円/kg)となると見込んでいる。しかし、7月におけるフィードロットへ
の牛の導入頭数は、肥育業者が堅調な需要を見越して導入に積極的であることな
どから、前年同月比7%増の167万頭と極めて高水準となっており、潤沢な供給が
今後も見込まれる。さらに、西部や南部の主産地では夏の降雨不足が伝えられて
いることから、冬場の粗飼料供給不足を懸念して子牛を手放す繁殖経営が増える
ことも予想される。このため、ホテル・レストラン部門や輸出市場などからの高
級牛肉需要が秋以降衰えるようなことがあれば、肥育牛価格は、USDAの見通し
を下回る可能性も生じてくる。

◇図 枝肉重量の推移◇

◇図 牛肉の卸売価格◇

元のページに戻る