◇絵でみる需給動向◇
今年に入り上昇を続けていたEUの豚肉価格は、8月に入りおおむね落ち着きを 取り戻しつつある。EUの主要豚肉生産国であるフランスの豚枝肉市場参考価格を 見ると、8月の平均価格は100kg当たり140.8ユーロ(約1万4,080円:1ユーロ=100 円)と、前月より7.4ポイント低下している。また、主要豚肉輸出国であるデンマ ークやオランダなども、フランス同様に低下している。 通常、バカンスシーズンを迎えた夏場は、バーベキュー需要によりソーセージ など食肉加工品を中心とした豚肉消費が伸びる季節ではあるが、今年は、北部ヨ ーロッパを中心とする冷夏の影響により、これら豚肉製品の消費が思ったほど伸 なかったこと、また、7月までの急激な価格の上昇が、消費を抑制する要因にな ったことなどが、最近の豚肉価格の動向に影響を与えたものとみられる。 ◇図 EU主要生産国における豚枝肉価格の推移◇
7月までの豚肉価格上昇の背景としては、まず第1に消費の回復が挙げられる。 EU委員会の資料によると、99年のEU域内の豚肉消費は、前年に比べて7%増加し たと報告している。これは、過去の供給過剰により、豚肉の小売価格が低水準で 推移したことから、割安感により消費を促す材料になったものとみられている。 第2に、EU域内への豚肉供給量の減少が挙げられる。豚肉価格の低迷は、結果的 に肉豚生産を減退させることとなり、さらに、最近の為替動向がEU域外への豚肉 輸出を刺激していることから、域内への供給は比較的タイトな状況となっている。 肉豚生産は引き続き減少が予想されることから、今後の豚肉価格は、比較的堅 調に推移するものとみられる。
このような中、EU最大の豚肉輸出国であるデンマークでは、米国向けを中心 に好調な輸出となっている。米国の輸入統計によると、デンマーク産の2000年1 〜6月の輸入数量は、前年度比14%増の3万6,600トン(ポンドからの換算数量) と目立った増加を見せた。 これは、EU単一通貨ユーロが、豚肉の主要輸出国である日本、米国の通貨に対 して安値で推移していることが最大の要因として挙げられる。また、米国では、 好景気に沸く経済情勢を受けて、従来のベーコン向けベリーを中心とする輸入需 要に加え、テーブルミート用のロイン需要が高まっていることも背景にある。 最近では、フランスやスペインなどの豚肉生産国も、為替の追い風を受けて輸 出に力を入れ始めており、今後の為替動向によっては、EU域内への供給に影響を 与えことも想定される。 ◇図 対ユーロにおける為替レートの推移◇
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