EU委員会、食品衛生規則の改定を提案


農場から食卓までの一貫した衛生管理が目的

 EU委員会は7月17日、既存の一般食品および動物(魚介類を含む)関連食品衛
生規則を改定・強化する提案を発表した。   

 発表された内容は、現在、食品の種類ごとに定められている17の指令(Direc
tive)を見直し、4つの規則(Regulation)として整理統合するというもので、
これまでは特に対象とされていなかった農家の家畜飼養管理段階でも、家畜の健
康に関する疾病・治療記録などを義務付けるなど、すべての食品製造者の責任を
強化し、農場から消費者の食卓までの一貫した衛生管理を図ることを目的として
いる。

 同提案は今後、EU理事会および欧州議会で共同審議されることとなり、実行に
移されるのは2002年以降の見込みである。


食品製造者の食品安全に対する基本的責任を設定

 今回の提案の背景には、食品に対する安全性などの認識が高まる中で、各製造
段階における食品の安全に対する基本的責任が重要視されていることが挙げられ
る。同提案の概要は以下の通り。

(基本方針)

 第1に、現在は、食品製造過程のすべてを網羅できる体系的な衛生規則が存在
せず、特に農場の1次生産段階で切れ目が生じていることから、農場から食卓ま
での一貫した衛生規則を導入する。

 第2に、自主検査および最新の危害管理を通じて、食品製造者の食品安全に対
する基本的責任を設定する。また、危害分析重要管理点(HACCP)システムの
実施を1次食品業者(農家など)以外に義務付ける。大部分の食品事業では、原
材料に対する品質検査、細菌汚染防止措置、抗菌のための熱処理などが安全管理
上非常に重要であり、これらが適切に実施されているかどうかの監視のため、H
ACCPに基づき行われる安全検査の記録が義務付けられる。

 第3に、すべての食品および食品材料の追跡可能性を実現するため、食品製造
者における食品事業すべての登録を義務付け、その登録番号を食品に付けなけれ
ばならない。また、食品および食品材料を特定できるように記録を義務付ける。
さらに、製造者は、食品が消費者の健康への大きな危険を及ぼす場合に、市場か
ら回収する措置を取らなければならない。

 なお、食品取り扱い時の基本的衛生規定はこれまで通り維持される。

(柔軟性)

 伝統的な食品製造や離島、孤立した山間地などでは、統一的な衛生規定の適応
が困難なことが予想されるため、このような場合には、加盟国が柔軟に対応でき
ることとしている。

 また、HACCPシステムの導入には、専門的な技術が必要なことから、中小企業
では対応困難な場合がある。このため、分野別に優良衛生措置規範を設定するな
どの支援措置を行う。

(動物由来の食品に対する追加規定)

 従来からの細かい規定について、大部分を改定し、より柔軟性のあるものにす
る。これはHACCPシステムの導入により、規定の単純化が可能になるという意図
の表れである。また、肉畜のと畜に関しては、と畜時の枝肉汚染を減少させるた
めの新しい規定を導入する。

(加盟国当局による管理)

 例えば、食肉カット工場などで、資格を有する獣医師による管理の下、食肉検
査技師が検査を行えるようにするなど、加盟国の行う獣医学的管理に柔軟な対応
が取れるようにする。

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