イギリス、14年ぶりに豚コレラが発生


9月14日までに12農場での発生を確認

 イギリス農漁業食料省は8月8日、サフォーク州の1農場で、86年以来14年ぶり
となる豚コレラの発生を確認した。その後、同州を中心に9月14日までに3州、計
12農場での発生が確認されている。

 これまでの発生は、イングランド東部の3州(ノーフォーク州、サフォーク州、
エセックス州)に限局しており、イギリス政府は、防疫対策措置として発生地の
周辺を対象に半径3kmの豚の移動制限および半径10kmの監視地域を設定している。
また、EUでは、これら3州からの豚生体、精液、卵および受精卵の輸出を禁止す
るとともに、豚の移動制限を命じている(9月14日現在)。なお、豚コレラ発生
の詳しい原因については、現在、農漁業食料省による調査が続けられている。


豚コレラ発生により2万頭以上の豚がとう汰

 EUでは、97年から98年にかけてオランダやスペインなどで豚コレラが発生し、
処分された豚の頭数が1千万頭を超えるほどの記録的な大流行を経験した。この
際、感染ルートの迅速な究明および豚の移動制限・処分など、感染をくい止める
ことの重要性が改めて認識された。このため、今回のイギリスでの発生では、発
生農場などで飼養されていた豚2万頭以上がEU規則(理事会指令80/217/EEC)
に基づき、と畜・処分された。

 また、イギリスでの豚コレラ発生を受けて、かつて豚コレラの大流行を経験し
た諸国は、今回のケースに対して迅速に対応している。オランダは8月10日、イ
ギリスからの生体豚の輸入を全面的に禁止し、既に輸入された生体豚については
オランダ国内での移動を禁止した上で、全頭を対象に検査を実施している。また、
ベルギーはイギリスからの生体豚輸入に関して検疫を強化する動きを見せている。


移動制限内の農場に対しても補償制度を実施

 一方、国内の豚肉生産者団体や動物愛護団体は、移動制限や輸出禁止措置など
により、豚コレラ発生農場以外の農場でも問題が起きているとして、政府に対し、
何らかの対応策を求めていた。これに応じる形で農漁業食料省は8月29日、動物
愛護の観点から豚のと畜制度を開始した。同制度は、移動制限が2週間以上にわ
たり、過密による動物愛護問題が発生し、解決手段が見つからない農家を対象に、
介入機関が集荷からと畜まで費用を負担するものである。8月31日に決定された
農家への補償金は、(1群での平均体重が)60kgを超える豚1頭当たり一律35ポン
ド(約5,775円:1ポンド=165円)、60kg以下の豚では1頭当たり一律10ポンド
(約1,650円)となっている。なお、豚コレラ発生農場の生産者に対しては、豚
の処分に関して、感染豚で市場価格の50%相当、非感染豚で100%相当が補償さ
れている。


感染の拡大によっては輸出禁止措置の延長も

 イギリスは昨年、20万7千トンの豚肉(製品ベース)および15万5千頭の生体豚
を輸出したが、その大半はEU域内向けであった。今後、さらに感染が拡大するよ
うなことがあれば、輸出禁止措置の延長なども考えられる。この場合、回復傾向
にある国内の肥育豚価格にも少なからず影響を与えるものとみられており、今後
の豚コレラ感染の動向が注目されている。

 初発生から現在(9月14日)までの農漁業食料省およびEU委員会の動きは次の
通り。

 8月 8日  サフォーク州の農場で、14年ぶりの豚コレラ発生を発表
 8月 9日  2〜3件目の発生を発表(エセックス州、ノーフォーク州)
 8月12日  4〜5件目の発生を発表(サフォーク州、ノーフォーク州)
 8月14日  EU委員会、イングランドからの豚生体、精液の輸出を禁止
       (EU委員会決定2000/515/EC)
 8月24日  EU委員会、上記決定を緩和し、ノーフォーク州、サフォーク州、
        エセックス州からの豚生体、精液、卵および輸出禁止に変更
       (EU委員会決定2000/528/EC)
 8月29日  動物愛護の観点から、豚と畜制度を開始
       (31日、農家への補償を決定)
 9月 4日  6件目の発生を発表(ノーフォーク州)
 9月 5日  7件目の発生を発表(サフォーク州)
	    EU常設獣医委員会で規制緩和提案を検討
 9月 6日  8件目の発生を発表(サフォーク州)
 9月 9日  9〜10件目の発生を発表(ノーフォーク州、サフォーク州)
 9月13日  11〜12件目の発生を発表(ノーフォーク州、サフォーク州)

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