中国、記録的な干ばつで夏収穫食糧は1割減


最近二十数年間で最も深刻な干ばつ

 中国は今年、湿った暖気と寒気流の影響などにより、全国20以上の省や自治区、
直轄市において、最近二十数年間で最も深刻といわれる干ばつに見舞われている。
国家災害対策弁公室によると、気温の高い7月終わりころから8月初めまでの干ば
つ地区における今年の降水量は、累計で10〜25ミリしかなかった。

 中国の主要な穀物生産省の1つである吉林省では、5月24日以降、これまでにな
い高温少雨が連続し、7月中旬までの発表では、農作物の作付面積全体の65%強
に当たる約265万ヘクタールが被害を受け、そのうち116万7千ヘクタールは、特
に深刻な状態であるとされる。

 なお、西部の四川省や甘粛省、陜西省などでは今年6〜7月、干ばつから一転し
て、集中豪雨による洪水や土砂崩れなどが相次いだほか、沿海部の福建省では8
月下旬、台湾を直撃して大きな被害をもたらした台風10号(国際名:ビリス)の
余波で、家屋の倒壊や農作物、魚介の養殖場などにも被害が及んでいる。


農畜産業などにも多大な影響

 この干ばつにより、揚子江の中・下流域にある湖北、湖南、江西、安徽などの
省では、高温少雨の連続で稲の一期作目の刈り入れと、二期作目の田植えに悪影
響が見られている。

 8月2日までの集計によると、中国全土で1,820万ヘクタールの作付けが干ばつ
の影響を受け、うち900万ヘクタールは深刻な被害、397万ヘクタールは収穫なし
の状態となっている。さらに、8月18日の時点では、全国の夏季および秋季に収
穫される農作物の総被災面積は3,067万ヘクタールで、まだ3,500万の人々と2,000
万頭もの家畜が飲み水の確保に苦慮している。

 農業部のサンプリング調査によると、今年の全国の夏収穫食糧(大部分は小麦
で、他に大麦、えん麦、豆類など)は、前年より1,100万トン少ない(9.3%減)
1億750万トン、早生稲は280万トン少ない(7%減)3,750万トンと予測されてい
る。全国26の夏収穫食糧の生産省・自治区・直轄市のうち、増産が見込めるのは
わずか5省で、減産見込みの省のうち、特に江蘇省はマイナス296万トン、山東省
はマイナス258万トン、安徽省はマイナス158万トンとなるなど、減産傾向が著し
い。

 これにより、4億9千万トンと設定されている今年の食糧生産目標は、未達とな
る可能性が出ている。


食糧生産の構造改革も減産の一因に

 国家統計局は、夏収穫食糧減産の主要因として、干ばつの影響などにより単収
が前年比4.4%減の1ヘクタール当たり3,642kgとなったことのほかに、作付面積の
減少を挙げている。

 中国では、このところ毎年のように豊作が続き、食糧価格が低迷している。こ
のため、政府は量から質への転換を図ろうと、低品質の食糧の減反や政府保護価
格による買い上げ対象からの除外など、食糧生産の構造改革に乗り出しており、
農民も食糧の作付面積を減らしている。

 これにより、今年の夏収穫食糧の作付面積は、前年を158万ヘクタール下回る
(5.1%減)2,952万ヘクタールとなった。この作付面積の減少による夏収穫食糧
の総生産量は594万トン減と推計され、減産分全体の54%を占めている。

 一方、菜種(なたね)については、市場価格が高く、収益が安定していること
などから作付面積が増大し、前年より104万トン多い(10.9%増)1,059万トンと
予測されている。

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