◇絵でみる需給動向◇
米農務省(USDA)によると、2000年1〜6月の生乳生産量は、3,889万トンと前 年同期を3.9%上回った。生乳価格が20年来の低水準で推移する中、上半期の生 乳生産は過去最高であった前年の記録を塗り替える結果となった。上位10州はい ずれも前年水準を超える生産となったが、増加の程度は州により大きく異なる。 シェア第2位および第3位のウィスコンシン、ニューヨークの両州は、微増にとど まる一方、第1位のカリフォルニアをはじめ、アイダホ、ニューメキシコの西部 諸州は、全米平均を大きく上回る増加率となった。 ◇図 州別生乳生産量の増加率◇
このような増産は、経産牛頭数、1頭当たり乳量がともに増加したことによっ てもたらされている。新規参入や増頭した大規模経営の多くは、98〜99年の高乳 価時に作った生産計画に基づき、依然として増産を続けているとみられる。また、 中小規模の家族経営は、収益性は必ずしも良くないものの、過去の高収益を反映 して負債を抱えていないため、現時点では経営を継続している。このような状況 下で、今年上半期平均の経産牛頭数は、14年ぶりに減少がストップした99年を 0.5%上回る920万頭となった。一方、1頭当たり乳量は、トウモロコシ価格など の低迷で穀物飼料が多給されたこと、粗飼料供給に恵まれたことなどから、99年 秋以降の前年同月比が3%を超える伸び率で推移している。 ◇図 経産牛頭数および1頭当たり乳量の推移◇
大規模経営は、低廉な生産コストを武器に増産を続けるとみられることなどか ら、2000年の平均生乳農家販売価格(飲用向け乳価と加工原料乳価の加重平均) は、5年ぶりに100ポンド当たり13ドル(31円/kg:1ドル=109円)を割り込むと 予想され、今後の価格見通しは明るくない。このため、乳価上昇の展望が開けな いとして、廃業に踏み切る中小経営が増加し、経産牛頭数は減少するとみられる。 また、1頭当たり乳量についても、主産地で夏の天候不順による粗飼料不足が伝 えられていることから、下半期は減少傾向での推移が予想される。こうしたこと から、USDAでは、生乳生産は今後減少基調に転じ、2000年通年の生産量を前年 比2.9%増の7,593万トンと見込んでいる。
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