◇絵でみる需給動向◇
豪州酪農庁(ADC)によると、2000年6月末時点での酪農家戸数は、前年比2.0 %減の1万2,888戸とこれまでの減少傾向が引き続く結果となった。その一方で20 00年6月末時点での経産牛の飼養頭数は、217万頭と前回調査(99年3月末)をわ ずかに上回り、91年から続く増加傾向を維持した。この結果、99/2000年度の酪 農家1戸当たりの経産牛飼養頭数は168頭となり、82/83年度以降一貫して増加し ている。また、経産牛1頭当たりの平均乳量は、前年度比3.5%増の5,000リットル と2年連続で増加し、酪農家1戸当たりの生乳生産量は増大している。 ◇図:酪農家戸数と経産牛飼養頭数の推移◇ ◇図:1戸当たりの飼養頭数と1頭当たりの平均乳量の推移◇
酪農家1戸当たりの経産牛飼養頭数増加の背景としては、海外市場からの需要 の強まりの中で輸出競争力を維持するための低コスト生産が求められていること 挙げられる。実際に生乳の多くが加工原料向けであるビクトリア州では、95/96 年度以降生乳生産に必要な経費についての現金支出の伸びが鈍化している。 低コスト生産のための方法としては、家族経営による労働コストの低減、飼養 頭数の拡大、育種改良の進展と併せて飼養方法の改善などが行われている。また、 乳業メーカーでは、これまで通年生乳生産の主体であった飲用乳のみならず、加 工原料乳についても工場の稼働率を向上させるために従来の季節変動の大きい生 乳生産体制に平準化を求めている。その一方で放牧主体である豪州の酪農生産に おいては、酪農家の生産コスト削減のためには季節生産の維持が不可欠であるな ど、低コスト生産の容易ではない現状が見えてくる。 ◇図:州別現金支出額の推移◇
豪州農業資源経済局(ABARE)によると、99/2000年度の酪農家経営収支は、 98/99年度に引き続き現金収入が増加し、それに伴い経営収支も黒字となった。 しかし、これまでの黒字の年度には設備投資や農地取得が多かったのに対して、 98/99、99/2000年度は借入金の返済に充てる動きが見られた。これは、酪農家 が2000年7月からの酪農乳業に係る規制撤廃により生産者乳価が低落する中、新 しい投資に対して慎重になったことによるものとしている。
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