◇絵でみる需給動向◇
ドイツ市場情報センター(ZMP)によると、2000年のEU15ヵ国合計の豚肉(生 体豚を含む)域外向け輸出量は、全体で147万トン(製品重量ベース、速報値) と前年を5%下回る見通しとなった。豚肉輸出の前提となる域内の豚肉生産は、 畜産に対する環境問題の高まりや養豚農家の減少など、域内各国での養豚環境が 厳しさを増す中で、需給バランスの改善や輸出需要の拡大によりおおむね増加傾 向で推移している。このため、豚肉輸出も、生産量同様、増加傾向での推移とな っていた。2000年の輸出量が減少に転じた要因としては、域内需給の回復に伴う 豚肉価格の上昇や輸出補助金の引き下げなどが挙げられる。中でも域内の豚肉価 格は、需給回復に伴い98年末から99年初旬を底値に上昇に転じ、2000年は年平均 で前年比26.1%高と大幅な上昇を見せた。特に最近では、牛海綿状脳症(BSE) 問題の拡大やイギリスでの口蹄疫発生がこれを加速させている。 ◇図:主要生産国における豚枝肉価格の推移◇
EU全体での域外向け輸出減少が見込まれる一方、EU最大の豚肉輸出国であるデ ンマークは、引き続き輸出増との見通しである。デンマークの豚肉輸出は、生産 量の約4割が輸出に向けられるため、域内需要の動向に比較的左右されないとい われている。2000年の域外向け輸出が好調であった背景には、最大の輸出先であ る日本向けや、好景気に沸いたアメリカ向け輸出が順調に拡大したのが要因とさ れる。今後の輸出量を占う2001年1月のデンマークの豚総飼養頭数は、1,264万2 千頭と前年同期比6.1%の増加を記録している。中でも繁殖用雌豚は前年同期比 7.0%増、また肥育豚も同6.0%増と、増頭による積極的な輸出量拡大の意欲がう かがえる。 デンマークの豚飼養頭数の推移 資料:Danmarks Statistik
イギリスで20年ぶりに発生した口蹄疫は、日を追うごとに発生件数が拡大し、 域内各国にさまざまな波紋を投げかけている。BSE問題の拡大に伴う食肉需給の 変化に対応し、域内各国はイギリスから生体羊輸入を行ってきた。各国では、 口蹄疫問題から早急にこれら羊の処分や、感染が疑われる家畜の検査を進めて はいるが、自国内での発生が確認された場合、豚肉をはじめ多くの畜産物が輸 出禁止となり、生産、輸出ともに大きなダメージを受けることは免れない。豚 肉輸出に直接的な影響を与えるだけに、今後の口蹄疫の動向が注視される。
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