肉牛・羊生産者に15年ぶりの好景気到来(NZ)


気象条件に恵まれ、生産効率が向上

 ニュージーランド(NZ)の食肉・羊毛エコノミック・サービスによると、同国
の肉牛・羊生産者は85年に新経済政策(規制緩和)が導入されて以来、15年ぶり
の好景気に沸いている。過去1年間の良好な気象状況が食肉や羊毛の生産量を増
加させており、NZドル安が生産者の手取りを押し上げたことに加えて、国際需
給のひっ迫見通しなどが先行きを明るくしている。

 これによると、NZの南北両島では過去12ヵ月間にわたって比較的良好な気象条
件に恵まれた結果、肉牛の飼養頭数が2年間続いた干ばつ以前の水準に回復した
ほか、羊の飼養頭数はほぼ横ばいにとどまったものの、ラム用子羊の生産率が過
去2番目に高い記録となった。また、全般的な飼養条件の改善により、家畜1頭当
たりの生産効率も向上した。


好調な輸出はNZドル安の為替相場が要因

 米国向け(加工原料用)を中心とする牛肉輸出は2000年を通じて好調に推移し、
95年にガット・ウルグアイラウンド合意が実施されて以来、初めて米国の年間関
税割当数量を上回った。羊毛需要も昨年後半から回復し、国際羊毛取引価格が大
幅に上昇した。加えて、予想外の為替相場のNZドル安が農産物輸出業界に追い風
をもたらし、生産者の手取りをさらに増加させた。

 この結果、2000/01年度における肉牛・羊経営の1戸当たり平均収益(課税前)
は前年度に比べて11%増加し、6万1千NZドル(約317万円:1NZドル=52円)に
達すると見込まれている。これは84/85年度以来実に15年ぶりの高収益となる。

 エコノミック・サービスは今後の見通しについて、牛肉価格は米国の肉牛飼養
頭数減少によって維持され、ラム価格はEUの需要増加と在庫減少によって上昇、
羊毛価格も高値が期待できるとしている。このため、為替レートが1NZドル=
0.45USドル程度に維持されれば、肉牛・羊経営の1戸当たり現金粗収入も前年度よ
り約7%の増加になると見込んでいる。


依然として厳しい状況が予測される肉牛・羊経営

 一方、NZの肉牛・羊経営が過去長期にわたって厳しい経営を強いられてきたこ
とから、生産者は今季の収益を消費材の購入に費やすことなく、借金の清算や土
地改良の肥料購入に充てることになるだろうとも予測している。

 NZの肉牛・羊経営は、もともと条件不利地で多く営まれていたことから国際相
場の影響を受け易く、82年に7千万頭に達した羊飼養頭数が4千5百万頭(2001年)
に激減し、肉牛飼養頭数も74年の630万頭から490万頭(同)に減少した。全経営
面積も86年から99年までの13年間に14%減少し、かんがい利用による酪農経営へ
の転換や放牧地への植林が進められている。このうち、酪農経営への転換は過去
7年間で1,340戸、植林面積は過去6年間で33万ヘクタールに達した。

 15年ぶりの好景気が到来したとはいえ、肉牛・羊経営の現状は決して甘くない
ことがうかがえる

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