競争力の強化を図る中国の家きん肉輸出
2000年の貿易総額は世界第8位に
中国海関統計によると、2000年の中国の貿易総額は前年比31.5%増の4,743億8
百万ドル(約55兆5千億円:1ドル=117円)で、金額、伸び率ともに改革開放以
来最高の水準となった。うち輸出総額は27.8%増の約2,492億1,200万ドル(約29
兆2千億円)、輸入総額は35.8%増の約2,250億ドル(約26兆3千億円)となり、貿
易黒字は約241億5千万ドル(約2兆8千億円)であった。これにより中国は、貿易
総額でオランダを抜き、前年の9位から1ランクアップして世界第8位の貿易大国
となる見込みとなった。
輸出入の伸び率では、輸入の伸び率が輸出を上回る結果となったが、2000年は
1次産品の輸入が急増し、約467億ドル(約5兆5千万円)と輸入額の2割強を占め
た。中でも、原油と大豆の輸入が目立って増加し、いずれも前年実績の2倍とな
っている。
なお、貿易相手の上位10ヵ国(地域)は、日本、アメリカ、EU、香港特別行政
区、東南アジア諸国連合(ASEAN)、韓国、台湾、豪州、ロシア、カナダの順と
なっている。これら10ヵ国(地域)との貿易額は4,085億ドル(約47兆8千億円)
に上り、中国の貿易総額の86.1%を占めている。
家きん肉輸出は18%増、金額ベースでは8%増に
中国の重要な輸出農産物の1つである家きん肉について見ると、2000年の冷凍
品輸出は、重量ベースで前年比17.9%増の約36万7千トン、金額ベースでは8.1%
増の約5億1,300万ドル(約600億2千万円)となっている。近年は各国の激しい輸
出攻勢の下、家きん肉の国際相場は低下する傾向にあり、輸出額の伸びが輸出量
の伸びを下回っているところにも、その一端をうかがうことができる。
中国の家きん肉産業は、85年ころから急激な発展を遂げ、87年以降はブラジル
を抜いて米国に次ぐ世界第2位の家きん肉生産国となり、以降もその地位を保っ
ている。最近でも、家きん肉生産量は90〜2000年の10年間で3.5倍強の伸びを示
している。こうした背景には、80年代半ばからの改革開放を機に、中国への外資
導入が活発化したことや、企業設立に対し税制面でも優遇措置がとられたこと、
経済成長に伴い、食肉の需要が豚肉などから、かつては高級食材とされた鶏肉に
一部シフトしてきていることなどがあると言われている。
その一方、中国では改革開放以降、主として農産物の生産量を増加させること
に主眼が置かれてきたため、最近では過剰生産によるデフレ傾向が続いている。
家きん肉も例外ではなく、生産の伸びがあまりにも急激であったため、その反動
から家きん肉の価格は年々下落する傾向にある。
◇図:中国の家きん肉生産量◇
◇図:自由市場における丸どり小売価格◇
中国の家きん肉、特に鶏肉の輸出先として、日本は最大の貿易相手国となって
いる。財務省の「貿易統計」によると、2000年における日本の鶏肉輸入量に占め
る中国産鶏肉の割合は、前年比2.8ポイント増の41.9%であり、そのうち生鮮・冷
蔵品については、地理的条件の有利性などから、中国産が99.8%を占めて独壇場
となっている。
今後の輸出の重点は付加価値製品へ
年々増加を続ける中国の家きん肉輸出だが、近年は、通貨切り下げの影響など
を背景に輸出競争力を増しているブラジルをはじめ、米国やタイなどの輸出攻勢
も激しさを増している。2000年の日本の鶏肉輸入量は、前年比10.0%減であった
が、逆に焼き鳥の材料など鶏肉調製品の輸入は15.5%増となっており、各国とも
鶏肉そのものの輸出から、調製品という付加価値製品の輸出へとシフトしている
ことがうかがえる。この鶏肉調製品のうち、中国産の占める割合は、前年比7.3
ポイント増の59.0%であった。
中国政府系新聞の「中国畜牧水産報」によると、中国の家きん産業は、労働力
が安いことが唯一とも言える強みであり、この安価な労働力を背景に、今後は輸
出の重点が鶏肉調製品に移りつつあると推察されている。
こうした中の2001年2月下旬、北京華都肉鶏公司から「無薬養殖」の鶏肉1万2
千羽相当が日本へ輸出された。同公司は国際規格であるISO9002の認定を受けて
おり、82年の設立以降、北京郊外の養鶏農家2千戸と契約を締結し、年間7千トン
の鶏肉製品を輸出している。「無薬養殖」の鶏肉は、中国農業部および北京市政
府の「無ホルモン、無残留薬物」の認定を得たもので、これが日本へ輸出される
のは、中国でも初めてのことという。
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