肉牛生産者団体、ブッシュ米大統領の減税案を歓迎


大統領、大型減税案を提案

 ブッシュ米大統領は2月8日、選挙公約でもあった、1兆6千億ドル(約187兆円:
1ドル=117円)に上る今後10年間の大型減税案を議会に提案した。その中には、
@所得税率区分の簡素化と税率水準の引き下げ(現行の15〜39.6%の5段階から、
10〜33%の4段階へ)、A共働き世帯に過重となっている税負担の軽減、B相続
税の段階的廃止などが盛り込まれている。


NCBAは相続税廃止などを強く支持

 特に、相続税に関しては、広大な土地基盤を有する家族肉用牛経営にとって、
後継者への経営継承を阻害するものであるとして、全国肉牛生産者・牛肉協会
(NCBA)が中心となって、その廃止を求める運動を長年にわたって展開してき
た。具体的には、相続税の納税義務がある農家にとって、・会計士や弁護士に依
頼し、法外な納税額が課せられないようにするか、・経営を継続する上で必要不
可欠な土地、建物、家畜などの資産を売却するしか手立てはなく、どちらに転ん
でも、家族経営の崩壊につながるとの主張である。昨年9月には、上下両院を通
過した相続税廃止法案が、クリントン前大統領の拒否権発動によって廃案になる
という憂き目に会いながらも、2月4日に終了したNCBAの年次総会においては、
相続税の廃止をはじめとする減税要求などが再確認された。

 8日公表の減税案においては「家族農業経営や自営業に対する相続税の賦課は、
アメリカン・ドリームに相反するものである」とのブッシュ大統領の見解が示さ
れた。これを受けて、NCBAのコーンウェル会長は「肉牛農家における税負担を
軽減するブッシュ大統領の提案を心から支持する」と述べた。


難航が予想される議会での審議

 ただし、現在の税法では、367万5千ドル(約4億3千万円)以上の遺産に対して、
55%の相続税が適用されるため、富裕層のみがその廃止の恩恵を受けることにな
るとの批判的な見方や、相続税の存在が、資産家から教会や慈善団体などへの寄
付を促す役割を果たしているとして、相続税の存続を求める声も上がっている。
また、減税規模に関しても、財政圧迫を懸念する民主党が減税総額の引き下げを
主張するなど、共和、民主両党の勢力が伯仲する議会では、かなりの難航も予想
されている。

 今回の大統領による減税案とは別に、現在議会には、超党派の議員によって複
数の減税法案が提出されているが、コーンウェル会長は「最終的にこれら法案が
成立するまで、働き掛けを続けていく」との立場を併せて表明している。

 なお、先のNCBAの年次総会においては、減税要求以外にも、@飼料作物の干
ばつ被害に対する作物保険制度の適用、A家畜疾病のまん延防止のための自主的
な個体識別プログラムの導入、B家畜取引情報報告義務化制度をはじめとする、
適正な取引価格の形成に向けた取り組みの強化、C環境保護規制に対処した農家
への支援、D牛肉の品質向上と栄養・健康に関する消費者への情報提供などにつ
いて、意思統一がなされた。

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