EUの牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○減少傾向が続く域内の牛飼養頭数


総飼養頭数は前年同期比で減少の見込み

 EU統計局は、2000年6月時点のEU加盟国における牛の飼養頭数を発表した。今
回の発表では、アイルランドやオーストリアなど一部加盟国の飼養頭数が未集計
であるため、EU15カ国全体の総飼養頭数発表とはならなかったが、フランスを除
く各国での飼養頭数が減少し、総飼養頭数は前年同期実績を確実に下回るものと
予想されている。域内の牛肉消費が安定的な経済成長に伴い回復傾向を示しつつ
ある中で、牛の飼養頭数は、96年に牛海綿状脳症(BSE)問題が再燃したこと、
生乳生産割当(クオータ)制度下で乳牛1頭当たりの乳量が増加していること、
畜産環境問題の影響などにより、96年をピークに下降しつつある。


フランスは増加、イギリス、スペインで増加の傾向

 国別の飼養動向を見ると、EU最大の飼養頭数を抱えるフランスを除き、各国と
も軒並み減少となった。唯一の増加となったフランスでは、生産基盤の確立に向
けた取り組みを行う中で、安定した拡大を遂げている。また、頭数全体では減少
であったものの、96年に導入された子牛の早期と畜奨励金が99年7月をもって終
了したことなどから、1歳未満の牛を中心に生産基盤の回復が見られるイギリス、
生体牛の輸入により飼養頭数の確保を図るスペインの動きが目立っている。

 一方、ドイツやオランダでは、乳用経産牛の減少の影響が大きく、前回に続い
て減少となった。また、今回、発表にはならなかったものの、活発な生体牛輸出
により飼養頭数の減少が見込まれるアイルランドの動向が注目される。

EU主要国の牛飼養頭数(2000年6月)
be-eu05.gif (8168 バイト)
 資料:EU統計局
 注1:数値は暫定値
  2:ベルギーにはルクセンブルグを含む


飼養頭数回復の障害となるBSE問題の再燃

 こうした中、フランスでは、10月に発生したBSE感染疑惑のもたれる牛肉の販
売問題を契機として、安全性への不安から回復傾向にある牛肉消費に影響が出て
いる。フランス国内ではすでに、レストランなどでの牛肉使用を控える動きなど
牛肉販売はかなりの減少がみられており、牛肉消費は急速に減退しつつある。こ
のため、11月のフランス国内牛枝肉販売価格は、100kg当たり133.3ユーロ(約1
万2,930円:1ユーロ=97円)と、BSE問題が再燃する9月の水準よりも、2割ほど
低下している。

 フランス以外の域内各国では、フランスからの生体牛や牛肉輸入を制限するな
ど、自国内への波及を最小限にとどめようとする動きが出ている。また、EU委員
会も、牛肉価格の下落が介入買い上げに伴う在庫増につながるだけに、牛肉消費
の安全性を訴えている。また、動物性飼料の一定期間の使用禁止など域内共通対
策を講じようとする動きがあるものの、消費者の不安感を完全には払拭できない
状況となっている。

 BSE問題の再燃は、飼養動向はもとより、牛肉需給などに大きな影響を与える
だけに、EU委員会をはじめとする各国での今後の対応が注目される。

◇図:主要牛肉生産国の枝肉価格動向◇

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