◇絵でみる需給動向◇
タイ鶏肉加工輸出協会が発表した2000年1〜9月の鶏肉輸出動向(速報値)によ ると、冷凍鶏肉および鶏肉調製品の合計は前年同期比15.5%増の23万1千トンと なり、かなり大きく増加した。1〜6月の対前年伸び率(6.4%増)と比較すると、 9ポイントもの上昇を記録している。 形態別には、第2四半期まではほぼ前年並みであった冷凍鶏肉が同10.7%増の17 万2千トンとなり、輸出増大のけん引役となった。また、鶏肉調製品も同32.3%増 の5万9千トンと、9ヵ月間で99年通年の輸出量(6万2千トン)に迫る勢いを見せ、 輸出の増大に大きく貢献している。 こうした輸出の急増を受け、同協会は、2000年の鶏肉輸出の見込みをこれまで の27万トン(冷凍鶏肉:19万8千トン、鶏肉調製品7万2千トン)から約15%上乗せ し、31万トン(冷凍鶏肉23万トン、鶏肉調製品8万トン)に上方修正している。 ◇図:冷凍鶏肉・調整品の月別輸出量◇
1〜9月の輸出動向を地域別に見ると、全体の7割近くを占めるアジア向けは前年 同期比11.1%増の15万9千トンとなった。最大の輸出相手国である日本向けは同 7.7%増の12万8千トンとなったが、その大宗を占める冷凍鶏肉は9万8千トンと4.0 %の伸びにとどまった。一方、鶏肉調製品は同22.3%増の3万トンに達し、鶏肉調 製品の伸び率が冷凍鶏肉をしのぐ傾向が続いている。 また、輸出全体に占める日本向けの割合は前年同期に比べ4ポイント低下してお り、日本市場への依存度はますます低下している。他のアジア諸国では、シンガ ポールおよび韓国向けが3割程度の伸びを見せ、それぞれ1万2千トン、4千トンと なったほか、香港向けは3.1倍の9千トンと大きく躍進しており、中国本土向け (3千トン)の3倍となっている。これらの国々への輸出増大には、調製品輸出の 伸びが大きく貢献しており、シンガポール向けが59.8%増、韓国向けが3.5倍、香 港向けが165倍と大幅に増加している。アジア全体では依然として日本向けが突出 しているものの、調製品の需要増を反映してシンガポールや香港なども見逃せな い輸出市場に成長してきたと言える。
一方、アジアに次ぐ輸出地域であるEU向けも、前年同期比26.0%増の7万1千ト ンと大幅に躍進した。国別に見ると、オランダ向けが前年同期比31.6%増の2万 5千トン、ドイツ向けが17.1%増の2万5千トン、イギリス向けが33.9%増の1万9 千トンと、これら主要3ヵ国向け(EU向け全体の97%を占める)がいずれも大幅 に輸出を伸ばしている。 今回の発表は2000年9月までの輸出動向を反映したものであるが、EU地域では、 10月下旬のフランスにおける牛海綿状脳症(BSE)発生により牛肉需要の大きな 低下が見られており、2000年第4四半期以降、同地域向け輸出がさらに増大する 可能性が高い。タイの大手輸出業者の中には、BSE対策に苦慮するEU市場に配慮 して「動物性飼料を用いない鶏肉生産」をアピールしているところもあり、これ がEU向け輸出の増大に大きく寄与しているともいわれる。
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